階段を上ったり運動したりした時の「こり」は危険
なぜ、心臓の疾患が肩こりにつながるのか。
体に張り巡らされた神経は脳につながっている。体のどこかに異常があると、痛みとして脳に伝わる。神経は脳に近付くほど太い束状になっていて、異常がある場所から送られる痛みの信号を、同じ束につながっている異常のない場所からの信号と勘違いしてしまうのだ。
東京ハートセンター・細川丈志副院長「胸の痛みを感じる神経と、肩や腕の痛みを感じる神経、特に左肩の神経は、非常に近いところを走行している。これによって混線してしまって、本来は胸が痛いはずなのに、脳の方が『肩と腕が痛い』と錯覚してしまう」
危険なのはどんなタイプの肩こりなのか。
細川副院長「もんでもマッサージをしても改善しないものや、階段をのぼった後など、運動した時にこるものは非常に危険」
そしがや大蔵クリニック・中山久德院長「通常の肩こりは、血流障害によって肩が硬直した状態。押すと「痛気持ちいい」ことが多い。危険なものは、もんだ時気持ちよさよりも痛みが強くなる」
日本薬科大学・丁宗鐵学長「肩全体がこっていなくても、肩井(けんせい、首の下と肩先を結んだ真ん中)のツボを押した時に違和感がある時は心臓の異常を疑ってみてください。循環器の専門医に相談すると安心です」
右肩のこりにも、危険な病気のサインが隠れていることがある。
主婦の内海昭子さん(仮名、73)は、1999年にある病気が発覚した。
最初の異変は43歳の時だった。事務の仕事を始めたばかりの頃、右肩の少し下が重いように感じていた。
しかし就職後数年で総務部長に昇進するほど仕事にまい進していた内海さん。右肩のこりは悪化し続けたが、つい放置してしまっていた。
こりを感じ始めて約14年、56歳の時に受けた健康診断で、C型肝炎が見つかった。
病気は発覚したが肩こりは改善せず、頻繁に指圧へ通い、指圧代だけで年間21万円にのぼることもあった。
しかし2年前、医師から勧められた新しい薬を使用したところC型肝炎が改善。同時に肩の痛みもとれ、今では何の異常も感じないという。
肝臓の異常が肩こりにつながったのはなぜか。
肝臓の中には神経が走っていないが、肝臓のすぐ上には横隔膜があり、横隔膜は肩の周りの筋肉とつながっている。体の右側にある肝臓に炎症が起こると横隔膜が刺激され、右肩にこりや痛みを感じることがある。
札幌禎心会病院脳疾患研究所・上山博康所長「肩こりだけではなくて、背中など局所の痛みも危険。違和感のある痛みを背中や肩に感じた時が危険だととらえた方がいいかもしれません」
ナグモクリニック・南雲吉則総院長「肝炎を起こしていると非常に体の具合が悪くなる。全身のだるさや熱っぽさをともなう痛みは危険」