マラリアへの抵抗力が世界の血液型分布を決めた
(7)マラリア:ABOという血液型の分布が国によって異なり、特にアフリカ、東南アジア、中南米など熱帯地域の人々にO型が多い。いずれもマラリアの脅威のある地域で、O型が重症のマラリアにかかりにくいからだ。その理由を研究した結果、マラリア原虫が「RIFIN」というタンパク質を分泌、これが赤血球の表面に付着して接着剤の役目を果たすことがわかった。
「RIFIN」はA型の赤血球の表面には強く結合するが、O型とは結合が弱いため、マラリアの多い地域にO型が生き残り、人口比が高くなった(2015年・スウェーデン・カロリンスカ研究所)。
以上の結果をみると、O型ばかり得をして、AB型が損をしているように思われるが、どうして病気の発症と血液型が関係してくるのか。免疫学者の藤田紘一郎・東京医科歯科大学名誉教授の著作『血液型の科学』などによると、こういうことのようだ。
もともと血液型によって免疫力が違う。外部からの異物(ウイルスや細菌)と戦う抗体はリンパ球で作られるが、白血球の中のリンパ球の割合が血液型によって異なる。O型39%、B型37%、A型36%、AB型34%。つまり、O型が最も病気に強く、AB型が最も弱いことになる。
これは進化の過程で血液型が分かれてきたためだ。人間の先祖は最初O型だった。やがて農耕生活に入り、穀物や野菜を食べるようになると、それらを消化できるよう腸内細菌が変化し、A型人間が登場。牧畜を始めると乳製品を消化できるようB型人間が誕生、最後にAB型が現れた。O型は人間の「基本形」だけに、何でも食べた頃のたくましい免疫力を残しているらしい。