どんな夫婦にも、けんかはつき物だ。ちょっと注意するつもりだったのに、いつの間にか悪口の応酬に発展してしまうことも珍しくない。反対に、衝突するくらいなら相手が気の済むまで怒らせて、自分は我慢し続ける人もいるだろう。いずれも、体にはよくないようだ。
夫婦げんかで感情を露わにしすぎたり、逆に抑圧しすぎたりする人は、健康へのリスクが高まるという研究結果が、米ノースウェスタン大学と米カリフォルニア大学バークレー校の研究チームによって2016年5月24日、発表された。
怒りを適度に抑え、適度にぶつける
研究チームは1989年から20年以上、40~70代(調査開始時点)の夫婦156組の口げんかを観察し、どういった健康への影響が出るかを分析した。その結果、感情を爆発させやすい人は、胸の痛みや高血圧といった心血管系の疾患にかかりやすく、逆に我慢ばかりしてしまう人は、背中の痛みや腰痛、肩こりのような筋骨格系の異常をきたしやすくなることが分かった。
研究班のリーダーを務めたクラウディア・ハース准教授は「健康を気にするのなら、夫婦げんかの時に自分がどれだけ怒っているかを気にしてほしい」と呼びかけている。適度に抑え、適度にぶつけるようにすべきだという。
そうは言っても、いざ夫婦げんかになったら気持ちのコントロールがきかず、必要以上に感情を表に出してしまうかもしれない。反対にグッとこらえる人は、「適度に怒れ」と言われても困るだろう。一体どうすればよいだろうか。
「恋人・夫婦仲相談所」所長で、夫婦関係の著作が複数ある二松まゆみ氏は、生活情報サイト「オールアバウト」に寄せたコラムの中で、「いい夫婦げんか」について語っている。大事なのは「言葉遣い」「態度」「気持ち」の3つで、ルールがあるという。
週1度は夫婦で向き合う時間を
まず言葉のルールは、まず「バカ」「デブ」など人格や容姿への暴言は控える。「絶対~だ」「~に決まっている」という断定も禁物だ。
次に態度のルール。お互いに声が大きくなってきたと感じたら「ちょっとお茶でも飲もう」とクールダウンを図る。100%論破しようとせず、相手の言い分にも耳を傾けて正しいと感じたら「そこは君の言う通り」と認める。一方的に話し続けない。「あの時だって...」と別の話題を持ち出さない。いったん結論を出したら蒸し返さない。
最後に気持ちの面では、けんかを「対決」ではなく「意見交換」の場ととらえ、互いの言い分を認め合った上で結論を出す意識をもつべきという。
また、あえて夫婦げんかをする必要はないものの、「たまにけんかするのはガス抜きになる」。逆に「けんかもしないほど冷え切った夫婦関係は寂しすぎる」として、不満をため込みすぎずにその都度話し合う程度の「プチげんか」を、二松氏は推奨する。
一方、必要以上に我慢してしまう人はどうすればよいか。心理カウンセラーの根本裕幸氏は、人間関係や心の悩みの相談サイト「カウンセリングサービス」で、過去に一般女性から受けた夫婦げんかについての相談を紹介している。
「ささいな事でけんかになってしまうが、我慢すればいいと分かっている」という相談者に対し、「行き場のない不満が溜まってしまっているのではないか。普段から結構我慢することが多くないか」と推測した上で、「夫婦間のコミュニケーションが足りない感じがするので、互いに向き合える時間を週に1度でも作るといい。ルールを決め、互いの話を聴く時間にしましょう」と、日頃の向き合い方を変えるよう勧めている。