手軽なおやつや酒のつまみとして親しまれているナッツ。最新研究で、血液をサラサラにしてコレステロール値を改善、糖尿病を防ぐなど、数々の健康効果があることがわかってきた。
女性にはうれしいダイエットや便秘解消も期待できるという。太ると思われてきたのに、どこにそんな力を秘めているのか。
マフィンの代わりのおやつにするとウエストすっきり!
ナッツにいかに健康効果があるか、2015年以降に発表された研究成果だけでも次のとおりだ(カッコ内は発表年月と研究機関)。
(1)記憶力・集中力などの認知能力の向上:全米規模の20~90歳男女のデータベースから年齢・性別・人種・年収などで代表的な人々を対象に、6種類の認知機能テストを行なった結果、クルミを習慣的に食べている人は食べていない人に比べ、テストの成績が明らかに高かった(2015年1月・米カリフォルニア大学)。
(2)メタボリック症候群の改善:12~19歳の10代男女2233人を調べた結果、ナッツ類を日常的に多く食べている子どもほど、メタボになるリスクが減った。ただし、1日50グラムまでで、それ以上食べると効果はなくなった(2015年3月・米テキサス大学)。
19歳以上の男女1万4386人を対象にナッツ類を1日7グラム以上食べるグループと、それ以下のグループに分け、肥満度を表わす体格指数(BMI)、ウエストサイズ、血圧、コレステロール値などを比較した。その結果、すべての数値で7グラム以上食べるグループの方が健康的だった(2015年6月・米農務省研究班)
(3)総死亡率(早死にするリスク)の減少:55~69歳男女約12万人を調べた結果、1日にナッツ類を10~15グラム食べる人々の総死亡率は明らかに低下した。しかし、15グラム以上になると効果がみられなくなった。特に低下が顕著だったのは、呼吸器疾患、糖尿病、がん、心血管疾患だった(2015年6月・オランダのマーストリヒト大学)
(4)コレステロールの改善:ピスタチオに関する過去の9つの研究論文を分析した結果、食生活にピスタチオを積極的に取り入れることによって、総コレステロール値とLDL(悪玉)コレステロール値が下がる一方、HDL(善玉)コレステロール値を上げることが判明(2016年5月・イタリアのパルマ研究病院)。
(5)ウエストの引き締め効果:肥満の男女52人(30~65歳・平均年齢50歳)を対象に、間食にマフィンを食べるグループと、マフィンと同じカロリーのクルミを食べるグループに分け、6週間続けてもらった。次に2つのグループの間食を入れ替え、さらに6週間続けてもらい、それぞれの終了時に体重、体脂肪率、ウエストサイズ、コレステロール値を検査した。その結果、カロリーが同じでも間食にクルミを食べると、マフィンを食べた時よりウエストサイズが減り、コレステロール値が改善した。体重や体脂肪率は変わらなかったが、脂肪が存在する場所が違った。クルミの時はメタボの指標となる腹部の内臓脂肪が減った(2016年1月・米ペンシルバニア大学)。
アーモンドを5か月食べ続けると「老化物質」が半減
こうしたナッツのスゴイ健康効果は、どこから生まれるのか。クルミに関しては、2016年4月23日のJ-CASTヘルスケア「面倒な食事制限なしでも『改善』 クルミ食べるとこんなに良い事」で報じたので、アーモンドを中心に紹介したい。日本におけるナッツ研究の第一人者、井上浩義・慶應義塾大学教授の『アーモンドを食べるだけでみるみる若返る!』などを見ると、こう説明している。
ナッツ類は、アーモンド、クルミ、カシューナッツ、ピスタチオ、マカダミアナッツ、ヘーゼルナッツの6種類ほど(注:ピーナッツは地中に生えるマメ科植物で、正確にはナッツではない)。原産国は雨量の少ない痩せた土地が多く、その分、将来たくましく育つための栄養がぎっしり詰まっている。ナッツ類の3大効能は「ダイエット」「アンチエイジング」「便秘解消」だ。特に優れているアーモンドで、その効果をみると―。
(1)ダイエット効果:アーモンドには、リパーゼという酵素の働きをブロックする成分が含まれている。リパーゼは体内に入ってきた脂肪を分解する酵素だから、その働きを阻止すると、脂肪が分解・吸収されないまま体外に排出されるので太らない。肉料理の時に、ナッツも食べると脂肪は吸収されずにタンパク質だけをとることができる。
また、腸内には、砂糖や炭水化物をブドウ糖に分解するαグルコシダーゼという酵素がある。アーモンドはこの酵素の働きも阻止するので、炭水化物と一緒にとると、糖が吸収されないまま排出される。だから、血糖値が下がる。実証実験で男女8人(平均年齢42歳)に5か月間毎日アーモンドを25粒食べてもらうと、平均で2.9キロ体重が減った。
アーモンドも含め、ナッツは脂肪が多く高カロリーである。しかし、ナッツの脂肪は植物性脂肪だ。特に、アーモンドの脂肪の大半はオレイン酸で、悪玉コレステロールを抑制する働きがある。だから、とり過ぎない限り健康によい。
(2)アンチエイジング効果:老化は体の「酸化」と「糖化」が原因だ。「酸化」は活性酸素が細胞を錆びつかせることによって起こるが、予防にはビタミンEが効く。アーモンドはビタミンEの含有量がずば抜けて多い。
一方、「糖化」は、体内でタンパク質と糖が結びつき、「AGE」(終末糖化産物)という老化物質ができることによって起こる。AGEは強い毒性を持ち、一度蓄積されると減らすのが難しく、糖尿病やアルツハイマー病の原因となる。AGEを増やすもとになるのが血糖だ。アーモンドは血糖値を下げるため、老化を遅らせる効果があるというわけだ。実験ではアーモンドを5か月間食べた男女8人の「AGE」の平均値が半減し、井上教授自身も驚いたという。
(3)便秘解消効果:アーモンドの食物繊維はサツマイモの5倍。腸内の水分をたっぷり吸収した食物繊維が便のかさを増し、便通がよくなる。また、食物繊維は水溶性と不水溶性の両方が豊富にある。水溶性食物繊維は余分なコレステロールを包み、排出させる。また、不水溶性食物繊維は腸内にこびりついた老廃物をかき出してくれる。サツマイモを食べるには調理の手間がかかり、よけいな炭水化物までとってしまうが、アーモンドならすぐにポリポリ食べられる。
では、どれくらいの量を食べればよいのだろうか。井上教授は、毎日25粒、食事と一緒か食後のデザート代わりに食べることを推奨している。また、サラダのトッピングとしてふりかけたり、アーモンドをヨーグルトに入れてハチミツをかけたりするのもオススメだそうだ。