「やるなら霞が関全体の中で」と筋論も
今回、政府サイドでなく自民党内から声が上がったのが特徴で、特に、小泉氏というスターが中心メンバーということでマスコミの注目を集めた面がありそうだ。
最初に大きく報じたのが読売で、16年4月28日付朝刊4面(政治面)のトップ記事で、予算のグラフなども織り込んで伝えた。実は、2009年の議論は、麻生内閣が設けていた「安心社会実現会議」で、渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長・主筆(当時)が、「医療・介護と雇用・年金を所管する2省に分割すべき」と提言し、麻生首相が飛びついたという経緯があり、今回の読売の報道も、そうした「過去」を踏まえたものとの見方もある。
読売の報道はさておき、各紙も、小委員会の提言発表を受けて、5月12~13日付朝刊で報じたが、「自民・小泉氏ら若手が提言」(日経)など、「小泉氏」に大きなニュース性を持たせた報道ぶりが目立った。永田町や霞が関でも、小泉氏の父、純一郎元首相が、郵政民営化問題で「自民党をぶっ壊す」と打ち上げ、最後は反対議員に「刺客」候補まで立てた連想で、いずれ厚労省分割が大きな政治問題になるのでは、といった見方も出ているといい、産経のコラム「政界徒然草」は「多くの議員が、人気がある小泉氏とのバトルを避け、だんまりを決め込んでいるのが実情」と書いている(5月27日)。
ただ、自民党内では「やるなら霞が関全体の中で考えるべきだ」(ベテラン議員)といった筋論もあり、参院選公約では分割案が抜け落ちて「省庁再々編を検討する」との文言に置き換わり、実施時期も明示されない見通しになった。
今回は時間切れといった格好だが、若手の提言で厚労省の在り方に問題があることが改めて認識されたのも確か。「将来的に、厚労省分割が政局の大きなテ-マになる可能性もあるし、霞が関再々編の議論に進むきっかけになるかもしれない」(全国紙政治部デスク)と言えそうだ。