スタンフォード大学には「スパイダーマン学者」がいる!
この論文が欧米メディアに大きく取り上げられると、さっそく反論したのが米国のスタンフォード大学。生物模倣システム工学を研究しているエリオット・ホークス博士がテレビのトークショー番組に出演、「また科学が夢をぶち壊してくれた。(ケンブリッジでできなくても)スタンフォードならできるけど?」と、実際に博士が「ひっつきパッド」を両手に持って垂直のガラスの壁を登っていく動画を公開した。
実は、スタンフォード大学の研究チームは、ヤモリが壁を登る能力を応用した「ひっつきパッド」を開発、2014年に英科学誌「サイエンス」(電子版)に動画とともに論文を発表していたのだ。テレビで流した動画も同誌に載せたものだ。ヤモリの足の裏は、真空吸着でも接着剤でもなく、超微細な繊毛(せんもう)に覆われ、毛先の分子が壁の物質の分子と結合するという分子パワーで非常に強力な粘着力を得ている。
同大学では、「スタンフォードならできる」と題した動画を2016年1月下旬から大学の公式アカウントに公開した。今回の「科学論争」、スタンフォード大学に軍配が上がった形だが、もともとケンブリッジ大学のラボンテ博士は、スパイダーマンを意識して論文を発表したわけではない。動物の吸着成分を医学や工学に役立てることが研究の真面目な目的だった。大学の広報担当者が、話題作りに「スパイダーマン」を見出しに使った。これを「ヤブヘビ」という。