アフリカのサバンナで、オスライン同士が仲睦まじく交尾する写真が撮られ、「百獣の王のボーイズラブ?」と2016年4月、インターネット上で話題になっている。
イルカやキリンなどにも見られる「同性愛」なのか、それとも「相手はたてがみが生えた男装のメスライオン」なのか、諸説がにぎやかに飛び交っている。
「ライオンのこんな笑顔初めて見た。いい顔で笑うな」
インターネット上に流れている写真は、アフリカ南部にあるボツワナ北部のサバンナで撮られたという次の6枚。(1)堂々としたたてがみをもつオスライオン同士が、顔を寄せ合い、目を細めて巨大なネコのようにほおをスリスリ。(2)1頭がもう1頭にマウンティング。(3)(4)(5)下の1頭があおむけになり、もう1頭が笑うような表情をして上からのしかかり、相手の胸に頭や顔をこすりつける。(6)コトが終わり、仲良く見つめ合いながら歩き始める2頭。仕草はまるで巨大なネコのようにほほえましい。
ネット上では、次のようなコメントが相次いだ。
「ライオンのこんな笑顔初めて見た。いい顔で笑うんだな」
「すげえ楽しそうだし、気持ちよさそう。エンジョイしまくっとるなあ」
「2頭の並んだショット。格好よすぎ」
英紙デイリー・メールなど複数のメディアによると、撮影したのはベルギーの弁護士で、この地を旅行で訪れたニコール・キャンブルナーさん。「近くにメスライオンがいましたが、2頭は関心を示しませんでした。メスラインは妊娠していた可能性はありますが」と同紙の取材に語っている。
実は、ライオンの「同性愛」が撮影されたのは今回が初めてではない。ネットニコニコ動画「niconico」では2013年8月9日付配信で、撮影場所・状況は不明だが、たてがみのある3頭のオスが仲良くじゃれ合いながら交尾する映像が流れている。1頭がもう1頭にマウンティングしていると、別の1頭が現れ、「次はボクの番だよ。早く終わってよ」とばかりに、マウンティングしている1頭の顔に頭をこすり合わせるシーンなどが続く。
お相手は、たてがみのある「男装のメス」ってホント?
いくつかの動物専門家のサイトをみると、人間以外の動物の同性愛は珍しいことではなく、キリンやシャチ、バンドウイルカ、ヤギ、ニホンザルなど約450種が知られているそうだ。だから、ライオンにあったとして不思議ではないという見方がネット上に出ている。
また、オス同士では、自分の力を誇示するために、優位なオスが下位のオスにマウンティングする場合がある。ニホンザルなどがそうで、下位のオスは服従の姿勢をとる。しかし、ネコ科の動物では見られたケースはなかった。
そこで、驚きの説を展開しているのが「ナショナル・ジオグラフィック日本語版」(電子版)の2016年4月21日号だ。アフリカのライオンに詳しいキャスリーン・アレクサンダー博士の次のコメントを紹介している。
「私は(ボツワナで)20年間研究してきましたが、オス同士のああした行為は見たことがありません。片方はたてがみのあるメスと考えるのが妥当です」
同誌によると、ボツワナには遺伝的要因で、たてがみがあるメスライオンがいるそうだ。妊娠中のメスが異常に多くの「男性ホルモン」を分泌し、生まれるメスの子どもが「オス化」するケースがある。通常は野生状態では生き残れないが、なぜかボツワナでは生き残っている。
別の動物専門家のサイトによると、オスのような外見をしたメスの群れは、ほかのメスの群れから恐れられ、縄張りを維持するのに有利に働くためらしい。それらのメスの写真もネット上でアップされている。今回の「ボーイズラブ」の相手は、この「男装のメス」ではないかというわけだ。
しかし、ライオンはオスとメスの体格差が甚だしく、オスはメスよりも1.5~2倍くらい大きい。ネット上の「男装のメス」の写真を見ると、確かに、たてがみはあるが、思春期のオス程度のつつましやかなものだし、体も大きくなさそうだ。キャンブルナーさんが撮った写真の「オス」は、2頭とも、たてがみが堂々としたたてがみがてフサフサと風になびき、映画「ライオン・キング」の「シンバ」のように見事だったのだが......。