酌をしてもらうなら女性か細い男性に、太目の上司は最悪
一方、グラスの形や注ぎ方によって、グラス酒の量が変わってくるという実験結果もある。米コーネル大学とアイオワ州立大学の共同チームが2013年に行なった実験は、74人の健康な男女学生に、一定量のワインをグラスに注いでもらった。米国ではワイン1杯分と考えられている量は約150ミリリットル。その量と思われる目分量のワインを、様々な状況下で注ぎ、量に差が出るかどうか調べた。その結果、次のことがわかった。
(1)グラスの口径が大きい場合は、標準的なグラスに比べ、注ぐワインの量が平均で11.9%増える。また、同じ容量のグラスでも、背の高いグラスに比べ、背が低くて開口部が広いグラスは、同程度増えてしまう。
(2)グラスをテーブルに置いて注ぐ場合に比べ、自分が手に持っているグラスにワインを注ぐと、平均で12.2%増える。これは、片手でボトルを持つため、不安定になり、景気よく注いでしまうためらしい。
(3)透明なグラスに白ワインなど、グラスとワインが同じ色だと、注ぐ量が増える。ワインの量が確認しづらくなるためのようだ。
(4)肥満度を示す体格指数「BMI」の高い人(肥満傾向にある人)ほど、注ぐ量が増える。また、女性は男性に比べ、平均的に注ぐ量が少ない。
(5)74人の学生の中に何人か、いつも「ワインはグラスの半分まで」と決めている人々がいた。彼らは全員、すべての状況下で注いだワインの量は、基準の150ミリリットルを下回っていた。つまり、普段から節制を心がけている人は、決して飲みすぎないよう、注ぐ量の訓練ができているわけだ。
以上、2つの研究から得られる飲み過ぎないグラスの選び方や、注ぎ方をまとめると、こうなる。
(1)グラスは真っ直ぐで、開口部が狭い、なるべく小さい物を使おう。たとえ真っ直ぐでも大ジョッキは禁物だ。
(2)片手に持った手酌はダメ。自分で注ぐ時はグラスをテーブルに置こう。
(3)酌をしてもらうなら女性か、やせた男性に頼もう。「まあ、どんどん飲め!」と太目の上司に注がれるのは最悪だ。
(4)ワインを飲むなら、透明な白ワインより、量がわかる赤ワインに。
(5)普段から、「コップ1杯まで」と節制を心がけておくと、どんな時でも安心だ。