子を授かるには「WILL」が必要
しかし、不妊治療は困難を極めた。高齢の親や親戚には理解されないと思い、相談を誰にもしていなかった。「顕微授精」という、男性の陰嚢を切開して精子を採取し、女性からも卵子をとって、顕微鏡で見ながら体外で授精する手法を用いた。だが、成功率は20~40%と言われており、ユカイさんも2度失敗した。
「夫婦関係もギクシャクしちゃって、だったらもうやめようと、一度挫折したよ。別れようという話まで出た。辛かったね。気分転換で旅行したり、夫婦で子どもがいない人生も話したりしたけど、『最後にもう一度だけ挑戦したい』と妻に言われた。最後ならということで、男性不妊治療の第一人者がいる北九州の病院を探して行ったんだ。そこで治療したら、奇跡的に子どもを授かることができた。8年程前に治療を始めて、子どもができたのが7年前」
念願の子宝に恵まれた。何を思ったのだろう。
「嬉しいってのは当たり前だけど、それ以上に感じたのは、子を授かるには『WILL』、意志が必要だってこと。俺たちは一度挫折した。でも、夫婦で支え合ってコミュニケーションを取り続けてきたから、もう一度挑戦できた。2人で不妊治療を乗り越えて絆が深まって、今ではプラスになってるよ」
ユカイさんの表情は、一気にほころんだ。
2010年2月、47歳にして初めての子が生まれた。その後、「俺の使命だ」と、自身の経験を伝える活動を始めていくことになる。(後編に続く)