【熊本地震とインターネット(1)】
南阿蘇村「猿まわし劇場」から歓声が消えた 「観客ゼロ」ありのまま伝えるFBに反響

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阿蘇の厳しい現状を多くの人に理解して欲しい

   図らずもフェイスブックのメッセージが大勢に届いたのが、劇場再開に向けたひとつのきっかけになった。その後、マスコミが続々と取材に訪れ、被災した南阿蘇が注目されていると村崎さんは強く感じた。同時に、こうも考えた。

「南阿蘇は農業と観光が主要産業。観光施設の営業ストップが続けば、村全体が危機に陥る。自分たちが先頭に立って、自粛ムードを吹き飛ばそう」

   そこで次のフェイスブックの投稿から、題名に「舞台復帰への道」と付けた。既に大型連休が目の前に迫っていた時期、「ゴールデンウィークには再開しよう。状況は厳しいだろうが、一歩を踏み出すのが大事」との思いを強くした。

   4月26日の投稿では、「4月29日営業再開します!」と宣言。この時もシェア数は540件に達し、「いいね」など「アクション」も2200件近くに上った。以前は「半分趣味で更新していたフェイスブック」(村崎さん)だが、メッセージは確実にファンに広がっていると手ごたえを得た。

   劇場再スタート当日はマスコミの取材が相次ぎ、熊本県内の民放各局で報じられた。しかし、一般の客足は途絶えたままだった。6回公演のうち、1回だけが4人であとは観衆ゼロ。残酷な光景が広がった。震災前に入っていた団体の予約はすべてキャンセルになった。連休期間中の訪問者数は例年の10分の1以下に終わった。5月10日には、当面平日の公演数を6回から1回に、土日祝日は同2回に変更すると発表した。

   あえて「客が来ない」事実をフェイスブックで公表する理由を、村崎さんは「ありのままの情報を出して阿蘇の厳しい現状を多くの人に理解して欲しい」と明かす。注目度の高い今なら、フェイスブックを見てもらえる。そこで、1日も早く観光客でにぎわう日が戻るように「皆さんに来てもらいたい」との願いを込めている。

   今は訪れる人はわずかだが、義援金や、サルへの食べ物をはじめ支援の物資を持ってくる人がいる。中には被災者が癒しを求めて訪れ、「共にがんばりましょう」と励まし合うこともあるそうだ。

   阿蘇大橋の崩落で、熊本市内と阿蘇地域を結ぶ国道57号への道が寸断されており迂回せざるを得ない。村崎さんは、夏休みが始まる7月までにめどが立ってほしいと願う。今は夏の「全面復活」を目指して、新たにデビューさせるサルの訓練に余念がない。同時に、フェイスブックももっと活発に更新させていく予定だ。「ファンの人たちに、私たちのフェイスブックがあること自体知られていませんでした。もっと勉強を重ねて、活用していきたいですね」。

   ネットの拡散力を実感した村崎さんだからこそ、フェイスブックがPRの切り札になり得ると考えているかもしれない。

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