「優勝は必須条件だが、内容も重要」
稀勢の里は今、期待と強さを秤にかけられていると思う。期待は100%だが、横綱になる強さとなると、まだ疑問符がつく。
白鵬の思いがこれである。
「大関は強い」と、大関としての力は認めているが、対戦した13日目の相撲には納得していない。稀勢の里十分の態勢となったのに勝てなかった内容のことである。「(その相撲は)綱取りの一番だったといえる」と指摘した。
24日の横綱審議会でも、名古屋場所での稀勢の里の横綱昇進の条件についてこんな話が出た。
「優勝は必須条件だが、内容も重要」
白鵬と同じ考えといえる。つまり白鵬に勝って優勝しろ、ということである。おそらく白鵬にすれば、稀勢の里はまだ一度も優勝していないではないか、という思いがあるのだろう。
稀勢の里にとってこの夏場所は絶好のチャンスだった。日馬富士、鶴竜の両横綱は下降線だし、大物大関の照ノ富士は故障で話にならない状態。白鵬に勝ちさえすれば綱を締めることができた状況にあったからだ。勝負強い力士ならこの機を逃さなかっただろう。日馬富士も鶴竜も白鵬に勝って横綱に登り詰めている。
名古屋場所の前に30歳になる稀勢の里。いい年齢になる。今が最盛期と思われるのだが、これを逃すと、横綱間違いなしと言われながら届かなかった魁皇(幕内優勝5度)と同じ道を歩むことになる。あと一歩は想像以上に厳しく険しい。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)