近年、抗生物質が効かない細菌(耐性菌)が急速に勢いを増している問題で、2016年5月18日、英国政府が委託した研究チームが、2050年以降には耐性菌が原因で死亡する人は、現在の年間約70万人から14倍の1000万人以上に上る恐れがあるという報告書を発表した。
耐性菌対策は、5月26・27日に開かれる伊勢志摩サミットでも議題にのぼる予定だ。
出産が「危険な行為」となり、子どもの数が激減する
AFP通信やBBCなど複数の海外メディアによると、報告書はキャメロン英首相の要請で調査・作成されたもので、調査チームを率いたのは国際的エコノミストのジム・オニール氏。調査期間は2年におよんだ。
報告書によると、病原菌は、1個の細菌が24時間後には1億個になるスピードで繁殖し、抗生物質に対する抵抗力を身につけた突然変異がすぐに出現する。中国ではすでに最強の抗生物質コリスチンも効かないスーパー耐性菌が誕生し他国に侵入したと指摘。2050年には年間で3秒に1人のペース(年に1000万人)で死ぬレベルの伝染病が流行し、世界経済に100兆ドル(1京1000兆円)の損害を与えると予測している。
しかも、この予測は「非常に控えめ」で、医療費の増大などは含まれておらず、医療の面で次のような深刻な事態が予想されるという。
(1)通常の外科手術・帝王切開・臓器移植や免疫療法などは、耐性菌の感染により、命の危険を及ぼすレベルの伝染病が広がる恐れが高いため、行なわれなくなる。
(2)強力な菌による新たな伝染病が出現し、出産は非常に危険な行為とみなされて子どもの数が激減する。
(3)従来、治療可能だったさまざまな病気が、伝染病拡大の恐れから処置が難しくなり、不治の病になってしまう可能性がある。