【チョイス@病気になったとき】(Eテレ)2016年5月14日放送
「大丈夫? あなたの姿勢」
2016年5月20日の記事で、姿勢の悪さが体に与える影響として番組が取り上げた「ストレートネック」を紹介した。だが、これだけではない。
医師は歯への悪影響や、さらなる恐ろしい病気への関連性も指摘しているのだ。
のどに詰まった感じ覚えたら危険信号
頭が体の前に出ると、かみ合わせが弱い人は下あごも前に出てくる。人の体は下あごがずれたままかみ合わせを整えようとし、歯並びが悪くなる原因となってしまう。
東京歯科大学・阿部伸一教授「本当は奥歯でかむのが理想ですが、それがずれていくので、結果的にかみ方や飲み方、基本的なところに影響が出る」
乳歯が生えそろう幼児期、永久歯に生えかわる13歳前後、歯周病などで歯ぐきが弱り始めている中高年以上と、歯が「動きやすい時期」には特に注意が必要だ。
さらに恐ろしい病気につながると考える研究者もいる。耳鼻咽喉科医師で、国立病院機構東京医療センター臨床研究センターの角田晃一部長は、姿勢の悪さが脳こうそくを引き起こす危険性を訴えている。
姿勢が悪くなり頭の位置が下がるとのどの血管が曲がる。曲がった血管では血液の流れが悪くなり血栓ができやすくなる。この血栓が脳の方へ流れてしまうと、脳こうそくになってしまう可能性がある。
のどの血管が曲がった時点で、動くたびのどに詰まった感じ、引っかかっている感じを覚える。それは脳こうそくの予備軍のサインかもしれない。
こうした症状を防ぐ正しい姿勢とは、頭が天井から引っ張られているイメージで肩の力を軽く抜く。座っていれば手はひざの上に置く。
竹井教授「この姿勢は長く続けると疲れます。だから時々休んでまた正しい姿勢をする。これを習慣づける」
4週間ほど続ければだんだんこの姿勢が楽になってきて、正しい姿勢が習慣となる。
手術の傷跡や5年前のねんざに原因があった
姿勢を悪くする原因は「過去」にもある。
IT企業社長の岩崎博之さんは、2年半前から左手のしびれに悩まされてきた。首の骨の一部がつぶれ、左手につながる神経を圧迫しているのが原因だった。
岩崎さんの秘書の能美章子さんも、半年間、毎日ジャケットを着るのにも苦労するほどの肩の痛みを抱えていた。診断の結果は、肩の関節の炎症で痛みが起こる「五十肩」だった。
二人とも悪い姿勢が引き起こした症状だったのだが、岩崎さんは過去に受けた腹部の手術の傷跡、能美さんは5年前の足のねんざが姿勢の悪さの原因になっていた。
筋肉を覆っているほか、筋肉の中に入り込んで筋肉を支え、動きをサポートしている「筋膜」。傷やねんざの患部をかばうように動くと筋膜どうしが引っ張り合ってしまい、筋膜が固くなることによって姿勢が悪くなり体に凝りや痛みが現れてしまったのだ。
筋膜のゆがみを直す体操は、重心が左側の人は、左の手のひらを頭の後ろに、右手の甲を腰の真ん中あたりに当てる。次に肩甲骨を時計回りに回すようなイメージで、左手を指先から右方向に、右手は同様に左方向に、それぞれ伸ばしていく。そして左足を右足の前に交差させ、そのまま上半身を右に倒す。重心が右側の人はこれを全て逆に行う。この体操で、つま先から手まで固くなった筋膜が伸びていく。
自分の重心は、立っている時にどちらに体重をかけた方が楽かでわかる。
姿勢の悪さを正す方法はわかったが、そもそも自分の姿勢が悪いかどうか、何が体の痛みの原因となっているのか、自分で判断することは難しい。
竹井教授「理学療法士のいる病院へ行って根本的な原因を見つけてもらう。それによって自分に適した体操や生活習慣の改善法がわかります」