2017年春に卒業する大学生の就職内定率が、2016年5月1日時点で29.1%と3割に迫っていることが、就職情報のディスコの調べでわかった。前年同期と比べると、11.2ポイントも上回っている。
日本経済団体連合会の採用・就職活動指針に基づく就活スケジュールは、17年卒の大学生から、面接などの採用選考がはじまるのは6月1日となっているが、実態は有名無実化が進んでいる。
「学生の売り手市場」で短期決戦に
ディスコが2016年5月16日に発表した、17年3月卒業予定の大学4年生(理系は大学院修士課程2年生含む)の就職内定率は、前年に比べて11.2ポイント高い29.1%となった(16年5月1日~6日調査、回答数1191人)。前回調査の4月1日(11.8%)と比べても、1か月で17ポイント以上も増えたことになる。同社は、「前年よりも企業の内定出しのペースが早いことがわかる」としている。
学生が内定を得た業界をみると、「情報処理・ソフトウエア・ゲームソフト」や「調査・コンサルタント」「建設・住宅・不動産」のウエートが高く、文系では「情報・インターネット」、理系では「医薬品・医療関連・化粧品」も高い。社員数でみると、1000人以上の大手企業が56.7%を占めている。
ディスコによると、現在内定を得ている学生の多くは社員数で1000人以上4999人規模、業界で4位、5位クラスの企業という。「『第2、第3志望』で、『本命』企業の受験に向けて、まだまだ就活を続けています」と話す。実際に、内定を得ている企業への入社を決めている学生は1割弱で、8割超が就活を続けているという。
一方、学生が採用試験を受験した状況をみると、エントリーシートを提出した企業数は13.1社で、前年5月と比べて5社増えた。学生が参加した企業(単独)セミナーの数は15.1社だ。
また、採用試験を受けた企業数は、筆記試験が前年5月の5.3社から8.6社に増え、面接試験は3.4社から4.6社に、グループディスカッションは2.5社から2.6社に増えた。15年の就活日程(16年春入社)での選考解禁1か月前(7月時点)は、筆記試験が10.9社、面接試験は7.1社、グループディスカッションは3.6社だったので、今年はそれぞれ下回っている。
こうした結果に、ディスコは「必ずしも内定を出すのが早まっているわけではなさそう」とみている。17年卒学生の就活は、広報活動の解禁は3月1日で前年と変わらなかったが、採用選考の開始(6月1日)が前年より2か月前倒しとなった「短期決戦」だ。
企業も学生も早いペースで動きはじめているようだが、その半面、「学生の売り手市場であることに加え、今年は学生が志望する企業をしぼり込んで臨んでいる傾向がみられ、学生が受験する企業数は減っています」と分析している。
インターンシップに参加すると「内定」に近づく?
ディスコは、学生に人気がある、経団連に加盟する大手企業などは採用・就活指針を守っているとみているが、大手企業が経団連の指針を順守しているというのは、あくまで「表向き」なのかもしれない。
少なくとも、学生たちにそう思わせていることがある。ここ数年、活発になってきた「インターンシップ」がそれだ。インターンシップは「企業の就業体験」が目的。企業が会社説明会とは別に開いているもので、学生は就活前の3年生の夏ごろから企業と接触できるメリットがある。
一方、企業側も優秀な学生を「囲い込む」ため、通常の書類選考や採用試験、面接以外の「判断材料」として利用しているフシがある。学生のあいだで、「インターンシップに参加すると『内定』に近づく」と、ささやかれているのはそのためだ。
2016年春から、あるIT企業で勤めはじめた女性社員は、こう明かす。
「インターンシップに参加して、企業が優秀と判断した学生には事前に、優先的に会社説明会を行ったり、面接時の応対の仕方について教えてくれたりします。あからさまに学生が内定を得るのに有利であることをにおわす企業もあり、現実に早い段階で内定がもらえることもあったようです」
大手企業による、インターンシップでの囲い込みは活発なようで、現在内定を得ていない学生の中にも、内定を打診されている学生がいないとはいえない。
そんな大学生の就活に、インターネットでは、
「指針なんて意味ない。学生も企業も嘘つきまくり」
「やめちゃえばwww」
「そもそも『人柄』とか、そんなもんが1度や2度の面接でわかんのかよ」
「どーせ、3年経たないうちに辞めるんだろ。新卒も転職もいっしょにやればいいじゃん。企業もそのほうが楽だろ」
「6月からでええよ・・・ 俺ずるしたくないし」
「公務員になるわ。これならスケジュールに左右されないもんねwww」
「よく学歴偏重とかいうけど、高学歴学生はそれまで頑張ってきたんだから、企業がそれを重視するのは当然じゃん。やっかみかよ」
といった憤りの声やあきらめ、経団連の指針がすでに形骸化しているとの指摘が、数多く寄せられている。