デジタル化で変わるコミュニケーションのあり方 これからは「ブランドジャーナリズム」の時代!

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   世界で広告・PR、マーケティング、コーポレート・コミュニケーションを手がけるフライシュマン・ヒラード。その日本法人であるフライシュマン・ヒラード・ジャパンは2016年5月、日本オフィスのイニシアティブとして、世界に先駆けて「FH Brand Journalism Center(ブランドジャーナリズムセンター)」を立ち上げる。

   世界を取り巻くメディア環境が急速にデジタル化し、消費者が向き合う情報量が飛躍的に増えたことで注目を得にくくなり、「消費者にブランドやメッセージを届けることが難しい時代になった」という。

   新しいブランド・マーケティングの手法「ブランドジャーナリズム」が、なぜ今注目されているのか、フライシュマン・ヒラードUS本社のジョン・サンダース社長兼最高経営責任者(CEO)に聞いた。

  • (中央)ジョン・サンダース氏(フライシュマン・ヒラード社長兼CEO)、(左)馬渕邦美氏(フライシュマン・ヒラード・ジャパンSVP、FH Brand Journalism Center プロデューサー)、(右)安倍宏行氏(ジャーナリスト、FH Brand Journalism Center編集長)
    (中央)ジョン・サンダース氏(フライシュマン・ヒラード社長兼CEO)、(左)馬渕邦美氏(フライシュマン・ヒラード・ジャパンSVP、FH Brand Journalism Center プロデューサー)、(右)安倍宏行氏(ジャーナリスト、FH Brand Journalism Center編集長)
  • (中央)ジョン・サンダース氏(フライシュマン・ヒラード社長兼CEO)、(左)馬渕邦美氏(フライシュマン・ヒラード・ジャパンSVP、FH Brand Journalism Center プロデューサー)、(右)安倍宏行氏(ジャーナリスト、FH Brand Journalism Center編集長)

いま、パラダイムシフトが起こっている!

   ―― 初めての日本訪問と聞いています。日本企業の印象を、教えてください。

   ジョン・サンダース 日本企業は創造力があり、欧米やアジアの経済にも大いに貢献してきました。なかでも、製造業やそのテクノロジーは本当に素晴らしいと思います。稀に、日本企業はブランディングが弱点であるようにも聞きますが、日本にはまだまだ高い競争力をもつブランドが数多くありますし、その能力が劣っていることはありません。今、ブランディングの重要性はグローバリゼーションの中でさらに注目されています。ブランドは企業と消費者を緊密につなぐ役割があるからです。

   ―― デジタルメディアの普及で、PRの手法は最近の10年でガラリと変わったと思います。今、世界ではどのようなことが起っているのでしょうか。

   ジョン・サンダース いま、大きなパラダイムシフトが起こっています。スマートフォンに代表されるデジタル・コミュニケーションの普及が人々の暮らしを急速に変化させてきているからです。

   今、欧米企業では企業からメッセージを発信するとき、さまざまなメディアの特性にあった内容やタイミングで公開することがスタンダードになっています。デジタルメディアは24時間365日、あらゆる場面で、絶えず世界中の人々とコミュニケーションをとること、伝えることができます。したがって、コミュニケーションのタイミングや方法、中でも強力なコンテンツパワーが今まで以上に重要になっています。

   ―― デジタル化の時代にあった、新しいコミュニケーションの方法が「ブランドジャーナリズム」ということでしょうか。

   ジョン・サンダース ええ、「ブランドジャーナリズム」はこれまでになかった、新しいコミュニケーションの方法です。体系的に企業がオーディエンス(企業メッセージの受け手)とかかわりをもつことが重要で、それは企業からの一方通行ではなく、またリッチ(豊富な)なコンテンツが求められています。

   欧米企業は、テレビや紙媒体など既存のメディアを含め、可能な限りの方法で豊富に記事を発信しています。企業としては、より広範囲な対応が求められてくるわけで、これは企業にとってもチャレンジなのです。

   しかも、そこでは「ストーリー性」が重視されます。われわれは、多くの企業と深くかかわり、効果的にコミュニケーションをとること、つまり「ストーリーを語るのが、われわれの能力」と考えており、そのためには高い文章力が必要になるのです。

   一方、これはジャーナリスト、記者の方々にいえることですが、われわれは彼らの次のキャリアアップにも貢献できると考えていますし、企業はその高い文章力を求めています。さまざまな情報が錯綜する時代に、ひとつの情報の真意を確かめなければなりませんから、即戦力となる人材はなかなかいないのが現状です。今後は、記者の重要性がますます高まるとみています。

企業PR「動画の黄金時代」が到来した!

   ―― 注目しているコンテンツはありますか。

   ジョン・サンダース 豊富なコンテンツがありますが、なかでも言語(文章)と映像でメッセージを伝えることができる、ビジュアル効果は重要です。企業PRにおいてはインターネットでの発信を含めた、「ビデオ(動画)の黄金時代」が到来したといえるでしょう。

   ―― 日本企業がグローバルなPR展開する際、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。

   ジョン・サンダース 現在のブランディングの問題点は、消費者へのメッセージが「一方通行」なこと。企業側が言いたいことだけを発信しています。そのコントロールを変え、消費者が自分のことのように受けとめることができるメッセージに変える、「意識改革」が重要なのです。

   わかりやすく言えば、より第三者的な目線で企業やブランドのストーリーが語れるかが試されているのです。難しいかもしれませんが、いま考えを改めてチャレンジしなければ、グローバル企業として前進することはできないかもしれません。

   しかし意識改革を実現すれば、消費者との関係も緊密になり、株主価値を高めることにもつながります。従業員の意欲、価値を高めるためのコミュニケーションにも使えるので、社内の求心力をつけることにもなります。つまり、企業価値そのものを高めることができるのです。

   企業が消費者と密接な関係をつくるには、企業のオウンドメディアが中立的でジャーナリズム的な観点から情報を提供することが、とても重要になるのです。グローバルな企業はこの考えをベースにしています。われわれは、この考え方から「ブランドジャーナリズムセンター」を立ち上げました。広報、ネイティブ・アド、オウンドメディアと、すべてがかかわり合うことができる素晴らしいコンテンツをブランドとともに創造することが可能になります。


ジョン・サンダース氏 プロフィール

1990年フライシュマン・ヒラード・サンダース(現フライシュマン・ヒラード)を設立。2004年10月に欧州地域ディレクターに着任。2007年に欧州・ユーラシア地域の代表、2011年から欧州・中東・アフリカ地域(EMEA)の代表を務め、アムステルダム、ベルリン、ブリュッセル、ダブリン、ドバイ、ヨハネスブルク、ロンドン、ミラノ、パリ、プラハ、モスクワなど、EMEA全域のパートナーとの関係構築にあたった。2015年11月に、70年の歴史を誇るフライシュマン・ヒラードの第4代代表取締役兼経営最高責任者(CEO)に就任した。

2005年からは2年間、世界的にPR業界を代表する組織「The International Communications Consultancy Organisation(ICCO)」の代表を務めた。世界経済フォーラムの欧州・ 中央アジア委員会、欧州コミュニケーション・サークルのメンバーでもある。

担当したクライアント企業には、アボット・ラボラトリーズ、アンホイザー・ブッシュ、バリモア・プロパティーズ、エマーソン・エレクトリック、フルーツ・オブ・ザ・ルーム、三菱電機、マスグレイブ・グループなど多岐にわたる。

アイルランド・ダブリン生まれ、58歳。

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