2016年4月から行方不明だった沖縄県うるま市の会社員女性(20)が遺体で見つかった事件は、女性が持っていたスマートフォンの位置情報が操作の端緒になった。この情報取得のあり方が、少し変化する可能性も出てきた。
これまで、警察などの捜査機関は令状に基づいて携帯電話会社から位置情報を得ていたが、携帯電話の画面には「位置情報が検索されようとしています」といった表示が出る仕組みになっていた。だが、今後発売される一部の機種からは、それが表示されないようになる。捜査はスムーズに進むことになりそうだが、プライバシーの保護の観点からは懸念も出そうだ。
沖縄の事件では被害者の位置情報が端緒に
沖縄県うるま市の事件では、女性が持っていたスマホの位置情報が途絶えた場所の周辺を通行した車両を調べたところ、米軍関係者が使う「Yナンバー」の車の存在がクローズアップされた。沖縄県警は5月16日にYナンバー車を所有する米軍族の男(32)に任意で事情聴取し、5月19日に死体遺棄容疑で逮捕した。スマホが捜査のカギになった形だが、女性の遺体発見後もスマホは見つかっていない。
総務省が定める「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」では、犯罪捜査のために捜査機関が位置情報の開示を求めた場合は、携帯電話会社は(1)位置情報が取得されていることを利用者が知ることができる(2)裁判官の令状がある、ことを条件に開示することになっていた。(1)に対応するために、これまでの携帯電話では、位置情報が検索された場合、画面に「この端末の位置情報が検索されようとしています」と表示されたり、振動したりする仕組みになっていた。
総務省「ガイドライン」が改定されていた
だが、この機能が捜査の支障になるとして、警察庁は総務省に対してガイドラインの改定を要請。その結果、15年6月にはガイドラインから
「当該位置情報が取得されていることを利用者が知ることができるときであって」
という文言が削除された。ガイドライン上は、利用者に通知がなくても、令状があれば捜査機関が位置情報を得られるようになった訳だ。
そして、このガイドライン改定が、実際の端末にも反映され始めている。NTTドコモは、16年5月に発売された基本ソフト(OS)に「アンドロイド」を搭載したスマホ5機種で新ガイドラインに対応した、と報道されている。KDDI(au)やソフトバンクも対応を検討している模様だ。
一方、利用者は端末のGPS機能を無効に設定することもでき、その場合は外部から検索することは困難になる。
今回のガイドライン改定をめぐっては、日本弁護士連合会(日弁連)が15年5月に
「位置情報の取得を利用者に知らせることを不要とすれば、市民の知らないうちに、その行動が監視されることを認めることになり、市民に対し、捜査機関から常にGPS位置情報を取得されているのではないかという不安を感じさせることになる」
として反対する意見書を発表している。
警察にとっては、迅速な捜査に必要な措置といえるが、利用者の側も自分のプライバシーの「自衛」策が必要になりそうだ。