カレンダー業界や仏教界が、17年後に起こるとされる深刻な問題に頭を悩ませている。旧暦との兼ね合いで、先勝や友引、仏滅といった「六曜」が決められない「2033年問題」だ。
その影響は大きく、カレンダー業界が対応策を示したり、仏教関係者向きの専門誌が「大混乱もあり得る」と警告したりするほど。また一部の仏教関係者は、「飲み会や合コンの予定が組めない」と嘆きの声を漏らしているという。
既存のルールでは対応できない
六曜が日本で吉凶判断に用いられるようになるのは、明治時代以降とされる。「友を引く」といった意味に受け止められる友引に葬儀を避け、お祝い事や結婚式を大安に実施する。そんな風習は今でも根強く残っている。
六曜のあてはめ方にはルールがある。先勝、友引、先負、仏滅、大安、赤口の順に巡り、始まりの六曜は月ごとに違う。例えば、2月と8月は友引、4月と10月は仏滅だ。しかし、これはいずれも旧暦を基準にした話。旧暦の月が分かれば六曜も自動的に導き出せる一方、旧暦の月が分からなければ決められない。
それが、2033年の秋から34年春にかけて旧暦の月が定まらないという。これがいわゆる「2033年問題」だ。
旧暦の月は、月の満ち欠けが一巡する29.5日間を太陽の軌道位置を分割した12個の月名「中気」(大寒、雨水、春分、穀雨、小満、夏至、大暑、処暑、秋分、霜降、小雪、冬至)にあてはめて判断される。実際の季節とのズレを補正するため、1か月の「閏月」をどこかに挿入する決まりだ。加えて、「中気のない月に閏月を入れる」「中気が2つある月は春分、夏至、秋分、冬至を優先させる」というルールもある。
ただ、2033年は中気のない月が3つ(新暦8/25~9/22、12/22~1/19、34年2/19~3/19)、中気を2つ含む月が2つ(11/22~12/21、34年1/20~2/18)あり、既存のルールでは調整できない。2033年8月25日以降の7か月が何月になるのか定まらず、当然この期間の六曜も決まらないというわけだ。
「月刊住職」は「大混乱もあり得る」と警鐘
カレンダー業界は事態をすでに把握し、対策に乗り出している。カレンダーや暦の歴史、文化の保護に取り組む「日本カレンダー暦文化振興協会」(暦文協、東京都台東区)は15年8月に公式サイトで見解を発表。冬至を尊重する立場から11月22日からの1か月を旧暦11月と決め、次の月を「閏11月」とする案を示した。ただ、これも強制力はない。旧暦はすでに廃止された、という前提に基づき、国立天文台などの公的機関が最終決定を下さないためだ。
決まらないと、カレンダー業界以上に困るのは冠婚葬祭に携わる人々かもしれない。仏教関係者向けの専門誌「月刊住職」の16年1月号は「2033年問題」を大きく取り上げ、「十七年の間に統一見解がまとまらないと、大混乱もあり得る」と警鐘を鳴らしている。
現役の僧侶が店番を務める東京・四ツ谷の「坊主バー」も16年5月18日、公式ツイッターアカウントで「2033年問題」に触れ、こんな事情を明かした。
「友引は葬儀をしない為坊さんの休日。つまり友引の前日はお通夜しない。坊さんの飲み会や合コンは友引前日に行われます。一部仏教界が予定が組めないと嘆いています」
いずれにせよ、仏教関係者は「気が気でない」らしい。この問題、いつ、どういう風に解決するのだろうか。