三菱自ほど騒がないスズキの燃費不正 2社のどこが違うのか?

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   自動車メーカー大手の三菱自動車工業とスズキで発覚した燃費データの不正操作問題をきっかけに、消費者は不信感を募らせている。

   気になるのは、両社とも国が定めた「惰行法」と呼ばれる測定方法を使わなかったのに、メディアや株式市場などの評価が異なる点だ。同じ燃費データの不正なのに、なにが違うのか、なんだかすっきりしない、という人が少なくないようだ。

  • 三菱自とスズキの燃費データ不正、なにが違う?(写真は、2016年5月18日のスズキの記者会見)
    三菱自とスズキの燃費データ不正、なにが違う?(写真は、2016年5月18日のスズキの記者会見)
  • 三菱自とスズキの燃費データ不正、なにが違う?(写真は、2016年5月18日のスズキの記者会見)

スズキ「燃費を良く見せようという意図はなかった」

   スズキの株価は、「不正」が報じられた2016年5月18日昼すぎから売り浴びせられ、一時は2450円の年初来安値を付けた。終値は270円安の2613円だった。

   ところが、その翌19日は前場から買い気配で、一時は前日比204.5円高の2817.5円まで急騰。終値も92.5円高の2705.5円で引けた。「悪材料が出尽くした」と、いわんばかりの値上がりだ。

   一方、三菱自動車は不正が発覚した4月20日の株価がストップ安となり、終値は前日比131円安の733円に急落した。その後も「売り」が止まらず、ゴールデンウイーク前の27日には422円にまで値下がり。わずか、1週間で半値を割り込んでしまった。

   その後、日産自動車による救済の動きもあり、5月19日の終値は、前日比17円安の539円だった。

   三菱自は、ユーザーや部品メーカーなどへの補償が膨らむことが懸念されるなど、今回の不正問題の発覚をきっかけに、経営危機説まで飛び出した。これにはOEM提携している日産自動車が支援の手を差しのべたが、5月18日には新たに「RVR」や「パジェロ」など5車種でも不正も認め、相川哲郎社長(62)が開発担当の中尾龍吾副社長(63)とともに6月24日の株主総会後に辞任すると表明した。負った傷はかなり深い。

   2016年5月19日付の新聞朝刊では、読売新聞が「スズキ不正 全16車種 燃費測定、実測データ使わず」とトップで報じたほか、産経新聞もトップニュースで扱った。

   ところが、朝日新聞は「三菱自社長、引責辞任へ 燃費偽装 新たに5車種」と、三菱自をトップに据え、スズキはその記事を下に追いやった。日本経済新聞や毎日新聞は、スズキも三菱自も同じように取り扱った。

   どうやら、メディアの「評価」にも温度差があるようだ。

   三菱自動車も、スズキも、国が定めた「惰行法」とは異なる方法で燃費データを測定していた。

   スズキの鈴木修会長(86)は5月18日の記者会見で、「定められたとおりの測定方法を用いていなかったことについて、おわびを申し上げます」と陳謝。そのうえで、「当社のテストコースは海の近くにあり、風の影響で計測結果にばらつきが大きいため、つい装置ごとの実測値を使ってしまった」と釈明した。

   本田治副社長(66)も、「燃費をあえて良くしようという意図はなかった」と訴えた。

   スズキによると、燃費性能のカタログ表示との差は「上下5%程度」で、それを「誤差の範囲内」と説明。国土交通省に対しても、「燃費性能について、修正の必要はない」と報告した。

燃費不正データ、三菱自動車とは違う?

   一方、三菱自動車の不正操作には2つの問題ある。一つは、国が定めた「惰行法」ではなく、米国で走行抵抗を測定する「高速惰行法」を使用したこと。もう一つは、「室内試験機(シャシーダイナモ)」による測定で、自動車メーカーが自身で入力できるクルマの「走行抵抗値」(タイヤの転がり抵抗や空気抵抗など)のデータを、燃費を良く見せるために意図的に、不正に低く申告したことだ。

   これらの操作で燃費データを、実際の燃費よりも「5~15%」良くみせた。

   国の燃費試験は、交通安全環境研究所でクルマをローラーの上で走らせて行う。路上の状態に近づけるため、「走行抵抗値」を入力して負荷をかける。この走行抵抗値をメーカーが自主申告。走行抵抗値が大きいと燃費が悪くなり小さいと良くなる。

   国が定めた惰行法は、ギアをニュートラルに入れてクルマを走らせ、時速が10キロメートル落ちるまでにかかる時間を測定して抵抗値を計算する。一方、三菱自が使った「高速惰行法」は、ニュートラルで走らせて1秒ごとに速度がどれだけ落ちるかを測定して抵抗値を計算する。

   TIWの自動車アナリスト、高田悟氏は、「同じ不正操作であっても三菱自のほうが深刻にみえるのは、まず測定方法に『高速惰行法』を使っていること。これは明らかな不正で、関係者であれば分かっていたことです。さらには測定した数値の中から、『意図的』に燃費が良くなるようなデータを国に提出していたことがあります」と指摘する。

   一方のスズキは、惰行法による走行抵抗値を測定していなかったわけではない。説明を聞く限りでは、「意図的ではなく、惰行法によるデータに近づけるように、比べながら計測して『誤差』がなかったので、そのまま使ってしまったとしている」と話し、「意図的」であったかどうかで、メディアや株式市場などの評価が違ったのではないかとみている。

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