燃費不正データ、三菱自動車とは違う?
一方、三菱自動車の不正操作には2つの問題ある。一つは、国が定めた「惰行法」ではなく、米国で走行抵抗を測定する「高速惰行法」を使用したこと。もう一つは、「室内試験機(シャシーダイナモ)」による測定で、自動車メーカーが自身で入力できるクルマの「走行抵抗値」(タイヤの転がり抵抗や空気抵抗など)のデータを、燃費を良く見せるために意図的に、不正に低く申告したことだ。
これらの操作で燃費データを、実際の燃費よりも「5~15%」良くみせた。
国の燃費試験は、交通安全環境研究所でクルマをローラーの上で走らせて行う。路上の状態に近づけるため、「走行抵抗値」を入力して負荷をかける。この走行抵抗値をメーカーが自主申告。走行抵抗値が大きいと燃費が悪くなり小さいと良くなる。
国が定めた惰行法は、ギアをニュートラルに入れてクルマを走らせ、時速が10キロメートル落ちるまでにかかる時間を測定して抵抗値を計算する。一方、三菱自が使った「高速惰行法」は、ニュートラルで走らせて1秒ごとに速度がどれだけ落ちるかを測定して抵抗値を計算する。
TIWの自動車アナリスト、高田悟氏は、「同じ不正操作であっても三菱自のほうが深刻にみえるのは、まず測定方法に『高速惰行法』を使っていること。これは明らかな不正で、関係者であれば分かっていたことです。さらには測定した数値の中から、『意図的』に燃費が良くなるようなデータを国に提出していたことがあります」と指摘する。
一方のスズキは、惰行法による走行抵抗値を測定していなかったわけではない。説明を聞く限りでは、「意図的ではなく、惰行法によるデータに近づけるように、比べながら計測して『誤差』がなかったので、そのまま使ってしまったとしている」と話し、「意図的」であったかどうかで、メディアや株式市場などの評価が違ったのではないかとみている。