ガムをかむと「言葉」と「音」が脳内で無言のバトル
いずれも、他のことに精神を集中させるのが狙いだ。そこへ登場したのが、2015年4月に英レディング大学が発表した「ガムをかむ」という方法だ。
同大のフィル・ビーマン博士らのチームは98人の若者に、キャッチーなメロディーがウリのミュージシャンの曲をたっぷり聞かせた。パリ出身のDJ、デヴィッド・ゲッタとロス出身のロックバンドのマルーン5である。彼らの曲を聞いた直後の3分間、「曲を思い出さないようにお願いします」と頼んだ。こう頼まれると逆にほとんどの人が思い出してしまった。そこで、思い出すたびにボタンを押してもらうことにした。その際、次の3つのグループに分け、ボタンを押す動きに違いがでるかを観察した。
(1)ガムをかんでいる状態。
(2)ガムをかんでいない状態。
(3)ガムはかまないが、左右の指先を軽く打ち合わせてリズムをとる状態。
すると、ガムをかんでいた場合は、他の2つの状態に比べ、曲を思い出す頻度が明らかに低くなった。また、頭の中で曲が鳴っている時間の長さも聞いたが、ガムをかんでいる場合は、他の2つの状態に比べ、約30%減ることがわかった。 なぜ、ガムをかむとイヤーワームを止める効果があるのだろうか。ビーマン博士はこうコメントしている。
「ガムをかむという行為は、意味のない無声スピーチに極めて近い行為です。無声スピーチは、何かを黙読する時のように、言葉を音に出さずに頭の中でイメージすることです。この無声スピーチ行為が、頭の中に鳴り響く音のイメージであるメロディーを分解する作用があるのです」
つまり、ガムをかむことによって、頭の中で、言葉のイメージが音のイメージと無言の闘いを繰り広げ、音のイメージを追い払ってくれるということらしい。なんだか難しい理屈だが、ガムをかむことは単純でわかりやすい。