寿司屋で最初に食べるネタで、人の「育ち」が分かるのか――。いまネット上で、「最初に食べる寿司ネタ」をめぐる議論が注目を集めている。掲示板などに寄せられた投稿を見ると、「通は玉子から」「白身から頼むのがマナーだろ」などの意見が目立つ。
実際のところ、寿司のマナーとして「最初に食べるべきネタ」などあるのだろうか。今回J-CASTニュースは、『ミシュランガイド東京』で1つ星を獲得した寿司店の職人をはじめ、複数の専門家に話を聞いた。
「いきなりマグロじゃ脂で味が判らなくなる」?
「最初に食べる寿司ネタ」をめぐる議論が勃発したのは、2016年5月18日朝にネット掲示板「2ちゃんねる」に立った『回転すしで最初に取るネタで育ちが分かる』と題したスレッドがきっかけだ。
このスレッドを立てた投稿者は、本文には「いか」という2文字しか書き込んでいない。だが、この一言を発端に、多くのネットユーザーが「えんがわ一択だろ」「通は玉子から」などと、「自分が最初に食べている寿司ネタ」を続々と書き込み始めたのだ。
実は、似たような議論は、これまでも定期的にネット上で話題を集めていた。過去にツイッターやネット掲示板に寄せられた「寿司を食べる順番」についての投稿をみると、
「寿司は白身から頼むのがマナーだろ いきなりマグロじゃ脂で味が判らなくなる」
「マグロから食うなんて寿司屋のオヤジに怒られるぞ 下手したら出入り禁止になる」
「寿司屋の腕は玉子やかんぴょうじゃ解らん コハダでレベルが解る」
などと、自らの「こだわり」を主張する声が目立つ。だがその一方で「寿司を食べる順番に決まりなんてない」「好きなものを好きな順番で食べればいい」といった冷静な意見も少なくない。
『ミシュラン』寿司店職人の考えは...
では逆に、寿司職人の側から見て「客に最初に食べて欲しいネタ」はあるのだろうか。
寿司職人の養成学校「東京すしアカデミー」の校長は、5月18日のJ-CASTニュースの取材に、寿司を食べる順番に「決まりはないでしょう」と一言。続けて、同校では「お客様の食べたい順番でお出しするように教育しています」とも話した。
だが、職人にネタの順番を任せて注文した場合には、一般的に「味の淡泊なネタ」を先に出すケースが多いという。その理由については、
「大トロやアナゴなど、脂がよく乗ったネタや味の濃いネタを先に食べてしまうと、ヒラメやタイといった味の淡泊な白身魚が、『どこかもの足りなく』感じてしまうため、そうした順番で出す職人が多いのでしょう」
と説明した。
また、『ミシュランガイド東京2016』で1つ星を獲得した東京・下北沢の寿司店「福元」の職人は、「何から食べるかはお客さまの自由ではありますが・・・」と前置きした上で、
「正直に言えば、イカや白身魚といった味の薄いネタから食べてほしい」
と語る。その上で、寿司職人によって先に食べて欲しいネタには違いがあるともいい、「その店で一番自信があるネタを最初に出したいと思う職人もいる」とも続けた。
なお、水産食品メーカーのマルハニチロが16年3月29日に発表した『回転寿司に関する消費者の実態調査』によると、「最初に食べることが多いネタ」の1位は「サーモン」(23.1%)で、2位「マグロ(赤身)」(11.8%)、3位「ハマチ、ブリ」(6.6%)だった。