2020年東京五輪で正式種目の本命「野球・ソフトボール」がピンチにさらされているという。もし落選したら、と関係者は大慌てである。
「東京五輪採用 野球劣勢?」
朝日新聞が2016年5月10日付(朝刊)で報じた見出しである。それまで、野球・ソフトボールの種目復活は間違いなし、と安心しきっていただけにインパクトは強かった。最近になってくすぶっていた不安な話がそれによって表面化したのだ。
大リーグは依然、不参加姿勢
その裏付けがこうである。
今(16)年4月、夏季五輪28競技の国際競技連盟で構成する総会でIOCのバッハ会長が、組織委員の室伏広治スポーツディレクターにこう言い放ったという。
「(野球・ソフトボールの採用が)決まったわけではない」
バッハ会長は野球・ソフトボールの復活採用に最も理解を示していた人物だけに、東京五輪の関係者は驚いた。
さらに、3月のIOCプログラム委員会でも、野球・ソフトボールの採用に疑問を呈する話が出たという。
採用疑問の理由は、大リーグが参加しないとの姿勢をかえていない、チーム競技なので選手など関係者の人数が多すぎる――としている。
東京五輪の関係者が恐れるのは、採用が決定(8月)する今年に入って、なぜ浮上したのか、とのことだ。上記の理由はとっくにクリアして終わっていたはずではないか、という認識があり、それを蒸し返されたからである。
誘致コンサル料振込問題の影響は
いうまでもなく、野球・ソフトボールは東京五輪のいち押しの競技である。理由は、野球は日本で最も人気がある、スポンサーが付きやすい、球場はあるので新たに造る必要はない――など。
日本からすれば、しごくまともで採用に支障がない。ところがヨーロッパの五輪関係者からすると、ほとんどなじみのない競技だし、規則が難しく理解するのが困難。野球・ソフトボールの復活を強力にバックアップしてきたIOC委員が昨(15)年急死したことも影響しているという。
東京五輪組織委員会の森喜朗会長がテレビ出演し、複雑な表情を見せたのも、関係者の不安を表すものだろう。
やはり大リーグの不参加は大きいと認めた。「五輪は最高レベルの競技者の大会」の条件を満たさないということである。また、6か国でのメダル争い、というのも影響することになる。
6月初め、ローザンヌでIOC理事会が開かれる。そこで追加種目の案が作られ、リオ五輪前のIOC理事会で正式に決まり、総会で発表される段取りとなっている。つまり6月に外されたら落選ということである。
東京五輪はロゴ、新国立競技場建設の問題に続き、いまは東京五輪誘致のコンサル2億2000万円振り込み問題などトラブルが止まない。世界に悪い印象を与えている。それが野球・ソフトボールの採用に響かないのか、と落ち着かない。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)