「5月17日に『南海トラフ地震』が起きるって、本当なんですか」――。茨城県で震度5弱を観測する地震が発生した2016年5月16日夜から翌17日にかけ、ネット上にはこんな不安げな書き込みが相次いだ。
その発端となったのは、ある1人のユーザーがネット掲示板に寄せた「予言」にある。いったいなぜ、何の根拠も示されていないネット上の書き込みが、ここまで大きな注目を集めることになったのだろうか。今回、J-CASTニュースは、SNS上での人間の心理の動きに詳しい社会心理学者に話を聞いた。
「南海トラフ大地震に備えよ」「5月17日にまた来る」
ネット上で「17日に南海トラフ地震が発生する」と心配する声が出るようになったのは、「2062年から来た未来人」を自称するユーザーが、ネット掲示板2ちゃんねるの「オカルト板」に16年4月15日に書き込んだ内容がきっかけだ。
この「未来人」は、2010年にもオカルト板に現れており、その際に「次に書き込むのは2016年4月15日」と宣言していた。それから6年後、その言葉通り、同じ「トリップ」(2ちゃんねる上のIDのようなもの)を用いたユーザーが4月15日に再登場。
6年前に現れた「未来人」と同一人物を名乗るこのユーザーは、「南海トラフ大地震に備えよ」「5月17日にまた来る」などと、大震災の発生を示唆するような投稿を寄せていた。同日は熊本地震の「前震」が発生した翌日だったことから、それと関連付けて不安がる声も出ていた。
それから約1か月。茨城県を震源とする地震が5月16日夜に発生したことから、ツイッターやネット掲示板などでは、こうした書き込みが再注目され、
「5月17日に南海トラフくるっていう予言があるのを聞いていたけれど、今日の地震が前震だったりして......」
「未来人が予言したとかいう南海トラフの前震だったりする...?まさかね」
「今日、明日は怖くて寝れないかも。 未来人の予言とか本当に怖すぎる」
などと不安がる声が相次いだ。16日夜から17日未明にかけて、ツイッターの「トレンド」にも、「南海トラフ」「未来人」といった複数の関連ワードが登場するほどだった。
「不安をあおるような投稿」は拡散されやすい
いったいなぜ、こうした単なるネット上の書き込みが、ここまで大きな話題を集めることになったのだろうか。SNS上での人間行動について研究している社会心理学者で、関西学院大学の三浦麻子教授は、5月17日のJ-CASTニュースの取材に、
「社会心理学的に考えると、不安をあおるような投稿や、あいまいな情報は拡散されやすい傾向があります」
と話す。また、「人は不安なとき、他人にその内容を話したくなる傾向がある」とも述べ、「災害などを予言する投稿」はツイッターでの「リツイート数」が伸びやすいと続けた。
さらに、人間は不安な感情を共有することでむしろ安心を得るような場合もあるといい、今回のようなケースでは、ネットユーザーが「大震災が起こるかもしれないという『不安』を好んで共有したがっているのかもしれない」とも分析した。
取材の終わりに三浦教授は、
「SNS上には、『外れた予言』が山ほどあると思います。その中で、一握りの『たまたま当たった予言』だけが抜き出されます。そのように抽出された投稿だけを目にするユーザーの中には、ある程度の『信ぴょう性』を感じる人もいるのでしょう」
とも付け加えた。