新鋭の作家に贈られる三島由紀夫賞を受賞したことについて、フランス文学者で元東大総長の蓮實重彦さん(80)が「はた迷惑な話だ」と会見で異例の発言をして、ネット上で反響を呼んでいる。
「『ボヴァリー夫人』論」などで知られる蓮實さんは、22年ぶりに3作目の小説「伯爵夫人」を書いた。戦前の東京を舞台に、旧制高校に通う青年が魅力的な未亡人と過ごす時間を官能的なタッチで描いたものだ。
「選考委員の方がいわば、蓮實を選ぶという暴挙に出られた」
これが新潮社の手がける三島賞に最高齢で選ばれ、蓮實さんは2016年5月16日の記者会見に臨んだ。
ところが、冒頭から会見は様変わりな内容になった。
受賞の「ご心境」について司会者が尋ねると、蓮實さんは、不機嫌そうな表情で次のように話した。
「えー、ご心境という言葉は、私の中には存在しておりません。ですから、お答えしません」
蓮實さんがこう口を開くと、報道陣からは笑いも起きる。質疑応答に移っても、蓮實さんからはそっけない言葉が続いた。記者が「おめでとうございました」と言っても反応せず、賞を断らなかった理由についても、「はい、それもお答え致しません」と突っぱねた。
司会者がほかに質問はないかと記者らに聞くと、蓮實さんは、「ないことを期待します」と言う。記者が躊躇しながら受賞を喜んでいるのか尋ねると、蓮實さんは、こう言い切った。
「あのー、まったく喜んではおりません。はた迷惑な話だと思っております。80歳の人間にこのような賞を与えるという機会が起こってしまったことは、日本の文化にとって非常に嘆かわしい」
「選考委員の方がいわば、蓮實を選ぶという暴挙に出られたわけであり、その暴挙そのものは非常に迷惑な話であると思っております」