東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長が2016年5月16日夜、TBSの報道番組「ニュース23」に生出演し、膨らむ仮設会場の整備費用の問題について改めて説明した。この問題も重要だが、今、高い関心を呼んでいるのは、招致時に招致委員会側から「コンサルタント」の口座に約280万シンガポールドル(約2億2300万円)を振り込んだとされている問題だ。
だが、番組では終盤にわずかに触れる程度で、森氏は「かなり日本側も焦っていた」などと釈明した。これに加えて、出演は東京都の舛添要一知事関連の話題は扱わないという前提だったようだ。「それもやっちゃいかんと言ってる」などとぼやきながら森氏がスタジオ入りする、異例の出演となった。
「それもやっちゃいかんと言ってる」
森氏は、番組開始から約10分後に登場。要人がテレビ出演する際は一応の笑顔を見せるのが一般的だが、今回は例外だったようだ。森氏がカメラに映る前に、森氏の
「~ないことになってんだよ。それもやっちゃいかんと言ってる」
という声をマイクが拾い、キャスターの星浩氏が
「一言申し上げますが、最近何かと舛添知事が五輪問題に絡んで報道されてますけど、今回森(元)総理の出演は舛添知事とは別個の問題としてお話しをうかがうことになってます」
と事情を説明。森氏もスタジオの席につきながら
「そういう約束で来たんだ」
と念を押した。
実際、約16分30秒にわたる出演時間のうち、「舛添」名が登場することはほとんどなかった。東京五輪をめぐっては、13年の招致段階では723億円だと見積もられていた仮設会場の整備費が、建設資材の高騰などで約4倍の3000億円近くにまで膨らむ見通しになっていることが16年5月になって明らかになっていた。こういった事情を踏まえて、
「仮設のものをもういっぺん東京都に返したい。東京都、国、われわれ組織委員会とで、もういっぺん協議し直しましょう、ということで3者でだいたい協議ができて、遠藤さん(遠藤利明・五輪担当相)、舛添さんも非常に『そのとおりだ』と協力してくれて、いよいよその協議を始めているところ」
などと、仮設会場についても都や政府が費用負担すべきだとする文脈で登場する程度で、舛添氏の知事としての資質に関する発言はなかった。
星氏には笑顔で「久しぶりで...政治の話しましょう」
招致活動時の送金問題も、終盤に星氏が
「私もジャーナリストだから聞かないわけにはいかない。今回の招致問題のお金の話、なんかこういうのがミソがつくというかケチがつく」
と切り出した程度。森氏は
「あの頃ね、日本はね、まぁ、はっきり申し上げると、猪瀬さん(猪瀬直樹前知事)の(「イスラム諸国はケンカばかりしている」などと述べたとされる)大失言問題があったりして、安倍さんが向こう(トルコ)に言って取り消してもらって、やったでしょ?そういうときで日本にとって非常に条件の悪いことで出てきていたもんですから、かなり日本側も焦っていた」
などと釈明し、それ以上特段の追及を受けることもないまま、星氏に笑顔で
「久しぶりで...政治の話しましょう」
と言い残してスタジオを後にした。