「池の水が干上がった」として、熊本地震の発生後に大きな話題を集めた水前寺公園(熊本市)が2016年5月16日、約1か月ぶりに再開園した。園の総務担当者によれば、「復興支援の目的もあり、5月中は拝観料を無料にする」という。今回J-CASTニュースは、そんな同園の池の水をめぐる「謎」に迫った。
地震の影響で池の水が枯れた4月16日以降、同園では応急処置としてポンプでの給水を続けていたが、約1か月の間、水位に全く変化はなかった。だが、5月13日になって、徐々に水位が上昇。16日夜から17日朝にかけては、水位は「地震前と変わらない量まで」回復したという。こうした経緯に、園も「池の水が戻った理由は分からない」と首をひねる。
池底から「湧水が出ていた」との報告も
景勝地として知られる水前寺公園の湧水池に異変が起きたのは、2016年4月16日に発生した「本震」の直後から。園の総務担当者によると、17日の早朝には広さ1万平方メートルの池のうち、8割ほどの部分で池底が露出した状態になっていた。担当者は、水が枯れた原因は不明としつつも、「地震の影響で(湧水の)水脈が移動した可能性がある」などと推測していた。
同園を管理する出水(いずみ)神社の宮司は、5月9日のJ-CASTニュースの取材に、「応急処置として、ポンプでの給水を続けていますが、現在も池底の半分ほどが露出した状態で、水位の回復は遅々として進みません」と話す。その理由については、「地盤が変化して水が溜められなくなったか、池の周りの石垣がズレて水が逃げているのかもしれない」と分析していた。
だが、5月13~14日頃から池の状況は一変。これまで約1か月間ポンプでの給水を続けても一向に戻らなかった水位が、徐々に回復してきたというのだ。さらに、園の再開2日目となる17日、園の総務担当者に池の様子を聞くと、
「16日夜から17日朝にかけての段階では、地震の起きる前とそん色のない状態まで水位が回復しました」
と明かす。
水の量が回復した理由については「分からない」と首をひねるが、池底から「湧水が出ていた」との報告も出ていたという。
だが、現地を訪れたJ-CASTニュース記者が17日15時頃に撮影した写真を確認すると、池の水位はふたたび減少し、一部池底が露出している部分もある。大きな魚は泳げないほどの水量だったそうだ。
「一時的に雨水がたまっただけかも......」
池の水位が突然回復し始めた理由について、産業技術総合研究所の丸井 敦尚(あつなお)地下水研究グループ長は、5月17日のJ-CASTニュースの取材に、13日と16日はともに熊本地方では大雨だったことから、「一時的に雨水がたまっただけかもしれない」と話す。
なぜなら、16日の大雨後も、周辺の地下水位に目立った変化はないからだ。具体的には、地下水位の標高は6.5メートルのままで、水前寺の池底周辺の標高はそれよりも高い9メートルだという。
また、丸井氏によれば水前寺公園では、昭和に入り熊本市の開発が進み、建物の重みなどで地下水位が徐々に下がり、湧水の量が減少したため、1980年代前半から、池の景観を保つために、湧水だけでなく給水ポンプで水を足していた、という。出水神社の宮司は、「水位が下がったときに一時的にポンプで水をくみ上げたこともあるが、ここ3年はしていない」としている。
だとすると、地震で池の水がなくなったのはなぜなのか。丸井氏は、地震の影響で、池底の地盤構造が変化し、水がぬけやすくなった可能性はあるという。
丸井氏は取材の終わり、
「池の底が露出した池の様子は、極めて自然に近い状態ともいえます。今後水位がどのように変化するかは分かりませんが、ありのままの状態をポジティブに捉えてほしい」
とも話している。