米のアメリカンフットボールリーグ「NFL」の選手が、プレー中の衝突やタックルで受ける脳のダメージが社会問題になっているが、元NFL選手の4割以上が脳に深刻な障害を抱えていることがわかった。
米フロリダ州立大学の研究チームが2016年4月下旬、カナダ・バンクーバーで開かれた米国神経学会年次学術集会で発表した。存命中の引退選手40人の協力を得て行なわれ、これまでの調査では最大規模だという。
半身まひや記憶力・学習障害の後遺症が残る
報告によると、調査対象は27~56歳の40人(平均年齢36歳)で、大部分は引退から5年以内だ。NFLでの在籍期間は2~17年(平均7年)で、現役中の脳しんとうの発症回数は平均で8.1回だった。
詳細なMRI(磁気共鳴画像)検査で脳の状態を調べ、記憶力や思考力のテストを行なった。その結果、17人(43%)が「外傷性脳損傷」と診断された。これは、交通事故や転落事故などで脳に強い衝撃を受ける場合と同じだ。脳が傷ついて出血し、半身まひ、感覚・記憶・注意力障害などが起こる。さらに、12人(30%)にはもっと深刻な軸索損傷がみられた。これは、脳深部にある軸索がねじれて断裂する症状で、半身まひや記憶障害の後遺症から回復することが非常に難しくなる。
また、記憶力や思考力のテストでは、遂行機能障害が50%、学習・記憶障害が45%、注意力低下が42%に認められた。
チームリーダーのフランシス・コニディ博士は「この研究は、存命中の引退後まもない選手の脳を調べた初めての大規模調査となりました。選手たちの外傷性脳損傷の発症率が、一般人のレベルをはるかに超える物的証拠を得られました。選手の半数近くが思考スキルの面で障害を抱えていることもわかりました」と語っている。