専業主婦の評価をめぐるアンケートの結果が波紋を広げている。専業主婦(主夫)の妥当な年収について聞いたところ、女性では「200万円」という回答が最も多かったのに対して、男性で最も多かった回答は「0円」だった。
過去に家事を金銭に換算しようという試算は複数存在するが、男女の意識の差とともに、男性の側に専業主婦の労働価値をいまだに「タダ」と見ている人が多いことに、当の主婦から強い反発も起きている。
男性の12%強が「ゼロ」と回答
アンケート調査を行ったのは、ニュースサイト「マイナビウーマン」。16年4月に25歳~35歳の働く男女を対象にウェブサイト上で調査を行い、女性201件、男性203件の有効回答を得たという。結果は5月13日に記事として掲載された。それによると、
「専業主婦(主夫)の年収はいくらぐらいが妥当だと思いますか?」
という問いに対して、女性の回答で最も多かったのが「200万円」(9.5%)。「100万円」(8.0%)、「300万円」(8.0%)が続いた。これに対して男性で最も多かったのが「0円」(12.9%)で、「100万円」(10.0%)、「200万円」(9.5%)が続いた。
記事によると、「0円」と回答した男性の一人は、アンケートで
「労働を評価するべきというのなら、外で稼いで家政婦を雇うべきである」
などと主張したというが、家事の価値を金額に換算するというアンケートの趣旨とは、相当距離があるように見える。「0円」と答えた男性で、ほかに理由を紹介されている人はいない。
この「マイナビウーマン」の記事が掲載された「ニコニコニュース」には1000件以上のコメントが寄せられ、
「0円...ベビーシッター兼ハウスキーパーが0円で雇えればいいのにね?」
「主婦は丸一日何もしなくて良い休みの日ってのは無いし、子供がいたら大変だよ。0円はさすがに下に見すぎじゃないかな」
といった主婦とみられる人たちからの反発が上がる一方、
「たしかに家事労働は無価値ではないが女一人にかかる維持費(飯代、宿泊代、他税金など)を考えれば0かマイナス」
など、「0円」に賛同する男性とみられる声も上がった。
内閣府の試算では専業主婦の年収は304万1000円相当
政府も、過去に家事の価値を試算したことがある。内閣府の経済社会総合研究所は2013年、家事、介護・看護、ボランティア活動などを指す「無償労働」を金額に換算する試算を発表している。それによると、無償労働を行うことによる逸失利益(企業などで労働していれば稼げたはずの金額)は、2011年は総額138兆5000億円だった。1人あたりに直すと、女性が年間で192万8000円、専業主婦の場合で304万1000円という結果になった。男性は51万7000円だった。
家事を業者に外注したとすると、さらに多くのコストがかかりそうだ。例えば家事代行業大手では、一般的なコースで1時間あたり4000~2500円を設定している。日本の年間総労働時間は、年間1800時間程度で推移している。これを単純に自給2500円で換算すると450万円程度だ。
税制面でも、専業主婦の働きを評価する制度がある。見直しが本格化している配偶者控除だ。参議院事務局が発行した「立法と調査」2014年11月号では、
「納税者(以下「夫」とする。)の所得稼得への妻の貢献(いわゆる内助の功)を税制上評価するなどの趣旨で導入された」
などと説明されている。現時点では配偶者の給与収入が103万円以下であれば、38万円の控除が受けられることになっている。