収益減少と人員削減の悪循環
野村HDは2008年、破たんした米投資銀行リーマン・ブラザーズの欧州・アジア部門を買収した。このリーマン・ショックでは、三菱UFJ銀行も90億ドル(当時の為替レートで約9000億円)を米モルガン・スタンレーに出資するなど、当時は「ジャパンマネーの復活」ともてはやされた。
しかし、野村HDの海外部門はその後、赤字を垂れ流すことになり、2011年7月と11月には人員削減などで計12億ドル(同972億円弱)、12年9月に同じく10億ドル(同785億円)など、人員削減などのリストラを繰り返している。12年のリストラの際に掲げた海外部門の「2016年3月期に500億円の黒字」という目標は、もちろん達成できなかった。
2008年のリーマン買収の際、野村HDは欧州部門について、不動産や有価証券などの資産・負債は引き継がず、「投資銀行の最大の財産である人材」に絞っての買収と説明された。だが、その後、「1人3000万円以上」といわれる人件費負担、一方で優秀な人材が流出するなどのため、期待したような収益が挙げられぬまま、リストラに追い込まれ、さらに稼ぐ力が落ち、またリストラ......という悪循環に陥った。
リーマン・ショックを機に国際金融規制が厳しくなり、世界的に投資銀行業務は収益力が低下している。これに、金融市場の混乱が追い打ちをかけた形だが、リストラによる収益改善は緊急避難でしかない。ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなど世界トップクラスとの競争に割って入り、世界的な投資銀行になるという野望の実現に向けどのような戦略を描くか。新たな道は、まだ見えてこない。