「人手不足で目のクマがひどくなりました。こんな私をどうか救って下さい」――。無料求人情報誌『タウンワーク』(2016年5月9日号)に、こんな自虐的な内容の求人広告が掲載され、ネット上で「自分でブラックアピールかよ」「面白過ぎる」などと話題を集めている。
ネット掲示板などでは、一種の「ネタ」として面白がるユーザーがほとんどだが、一部で問題視する声も出ている。いったい、どういう意図でこんな内容の求人を企画したのか。今回J-CASTニュースは、企画者本人に直接話を聞いた。
悲しげに目を伏せた女性従業員が「私を救って」
いま「自虐風求人」として話題を集めているのは、大手コンビニの東京都港区にある店舗が作成したアルバイト募集広告だ。求人が掲載された『タウンワーク』(港・品川・中央・太田区版)の誌面をみると、「お願い!!私を救って」と書かれたボードを持った従業員女性の写真が大きく掲載されている。
悲しげな表情で目を伏せた女性従業員の写真の下には、「人手不足で目のクマがひどくなりました・・・(泣)」という見出しがついた募集文が掲載されている。その内容は、「こんな私をどうか救って下さい」「特に夕方以降の勤務がピンチ!」などと、女性従業員が助けを求めるような調子。
『タウンワーク』に掲載された他の求人募集のほとんどが、従業員が楽しげな様子で働いている写真を掲載し、「スタッフは皆仲良し」「安心して働ける環境です」などとポジティブなアピールに励んでいるのに比べると、異様ともいえる「自虐ぶり」だ。
この求人広告は、あるツイッターユーザーが16年5月11日に写真付きで投稿したことをきっかけに、ネット上で大きな反響を呼ぶことになった。ツイッターやネット掲示板などには、
「嫌いじゃない」
「ネタって分かるけど『これ大丈夫?』とも思ってしまうのだが、これはアリだよな。OK出した×××(編集部が伏字に修正、実際はコンビニ名)最高過ぎる」
「よっしゃ!夕方以降に応募の電話したろ!」
など面白がるような反応が相次いで出ている。その一方で、一部のユーザーからは、「こんな求人出すとかパワハラだろ」「店員にこれやらせるだけでブラックってわかる」などと問題視する声も出ており、賛否が分かれている。
「挑戦的な広告」として企業も関心
いったいなぜ、ここまで自虐的な内容の求人募集を出したのだろうか。J-CASTニュース記者は5月13日、企画を担当した同店の女性マネージャーに直接話を聞いた。
実は、今回の求人広告を企画したのは、『タウンワーク』に掲載された写真に登場する女性本人。写真では、辛そうな表情でうつむいていた彼女だったが、実際に会って話してみると、ハキハキとして明るい性格。ブラックな職場で「パワハラ」に悩んでいる、といった雰囲気とは正反対の印象だ。
企画の趣旨について尋ねると、
「これまで、普通の内容の求人広告を掲載していたんですが、サッパリ手応えがなくて・・・。そこで、少しでも多くの人に興味を持って頂ければと思いまして、今回のようなインパクトのある『面白い求人』を考えました」
と話す。人手不足に悩んでいたのは本当だが、広告の内容ほど「深刻に考えていたわけではない」という。
実際、広告の反響は「予想以上だった」という。これまで普通の広告を掲出しても「ほとんど問い合わせがなかった」というが、今回の広告を4月末に初めて掲載したところ、すでに3人からの応募があるという。
また、採用応募だけでなく、求人広告の企画会社からも5~6件の問い合わせが寄せられたという。その内容は、挑戦的な広告の内容に興味を持ったとして、「手応えはどうだったか」などと反響を探るものだったそうだ。
取材の終わりに、記者が「パワハラではないか」という声がネット上で出ていることを伝えると、
「決して無理矢理やらされた訳ではありません。あと、そこまでブラックな労働環境でもないので、安心して応募して下されば。ただ、最近目のクマが増えていたのは本当ですけど・・・」
と笑いながら答えた。今回の広告が好評だったため、すぐに新たな求人を出す予定はないというが、機会があれば「インパクトのある広告を考えたい」と意気込んでいた。