松田優作に映画「ブラック・レイン」出演がなかったら
立花さん、田中さん、菅原さん。3人3様に「膀胱がん体験」を社会に伝えている。3人とは別の鮮烈な形で膀胱がんの怖さを印象づけたのが、1989年11月、40歳の若さで逝った俳優の松田優作さんだ。
松田さんは、死去の約1年前から血尿が止まらず、腹がパンパンに張っていた。都内の病院で診察を受けると、かなり進行した膀胱がんとわかった。しかし、治療を拒み、数か月間の撮影に入った。パラマウント映画「ブラック・レイン」の出演が決まり、念願のハリウッドデビューを果たせるからだ。病気のことは妻・美由紀さんにも隠し通し、撮影中は血尿を見られないよう他人がいるトイレには入らなかったといわれる。
告別式の日、大の親友だった俳優の原田芳雄さん(2011年7月、大腸がんで死去・享年71)はこう弔辞を述べて泣いた。
「優作......。俺は今までお前が死ぬところを何度も観てきた。その度にお前は生き返ってきたじゃないか。役者なら生き返ってみろ! 生き返って出てこい!」