国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が明らかにした「パナマ文書」。2016年5月10日未明には、ホームページでパナマや英領バージン諸島など世界21か所のタックスヘイブン(租税回避地)に設立された約21万社を超えるペーパーカンパニーに関する情報を公開するなど、追及の手を緩めない。
一方、日本の大手メディアは、パナマ文書の報道でばらつきが目立つ。租税回避が違法なのかどうか、また、脱税なのか節税なのか、についてのスタンスに差があるようなのだ。
「現時点では匿名で報道します」
国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、パナマをはじめ、世界21カ所のタックスヘイブン(租税回避地)に設立された約21万4000社の法人と、関連する約36万の企業や個人の氏名や住所のデータベースをホームページ上で公開。この中には、日本に関連するとみられる個人や法人名も約600件含まれていたとされる。
日本でもこれまで、ペーパーカンパニーの株主や役員として、楽天の三木谷浩史会長兼社長やUCCホールディングスの上島豪太最高経営責任者(CEO)、セコムやソフトバンク、伊藤忠商事や丸紅、三菱商事といった大手商社、ファーストリテイリング、金融機関や学習塾大手などの名前が取りざたされている。
2016年5月10日は多くの上場企業の決算発表と重なったため、「パナマ文書」に名前が記載されていた企業では、記者会見で説明を求められるケースもあった。いずれも「適切に納税している」などとして違法性を否定している。ソフトバンクグループは孫正義社長も「名前が出てきて、わたしも驚いた」と話した。
同社は、ソフトバンクBB(2015年にソフトバンクに吸収合併)などの名前がパナマ文書に記載されていた。孫社長は、英領バージン諸島に中国企業との合弁会社を設立していたことを認めたが、「租税回避のためではなく、ビジネス上の理由で投資した」と説明。その合弁会社は2011年に撤退したという。
こうした「パナマ文書」に関する報道が続々と発信されるなか、各メディアの報道には表現の差があるようだ。
日本テレビ系(NNN)はソフトバンクの記者会見のもようを、2016年5月10日深夜のニュースで「『パナマ文書』孫正義社長、節税目的を否定」と報じていた。10日付夕刊や11日付朝刊の新聞各紙の見出しをみても、日本経済新聞は「節税網 世界に拡大」と「節税」と表現した。
これに対して、朝日新聞や毎日新聞は「租税回避」と表現。毎日新聞は7面の見出しで「課税逃れ」としていた。産経新聞も「税逃れ」を使った。
一方、読売新聞は「租税回避」と表現し、「タックスヘイブン」の説明には「課税逃れ」と表記していたが、「パナマ文書」に記載されていた企業名、個人名については「原則、匿名で報道します」との「おことわり」を10日付け夕刊に掲載した。各国の税制が異なっているため、タックスヘイブンを利用していても税法上、問題視することはできない、と理由を説明。ただ、公職の個人や公共団体は道義上、実名とし、企業なども脱税などの違法行為があれば実名にすると説明した。