一人暮らしの大学生は栄養不足になりがちだ。学生食堂へ行けば、栄養バランスのとれた食事を提供してくれるが、今時の学生は「授業が忙しくて学食に行く時間がない」と簡単に済ませてしまうケースも多い。
京都大学は、健康な食生活をサポートする取り組みを始めている。「食堂に来られない学生も、食堂のメニューと同じ栄養がとれるように」と大学生活協同組合(生協)が販売を始めたのが「ヘルシー弁当」だ。
テイクアウトできるように
ヘルシー弁当は、京大生協食堂企画室の管理栄養士・飯田朋子さんらが京大健康科学センター監修のもと考案し、2015年10月に発売された。弁当開発のきっかけについて、飯田さんはJ-CASTヘルスケアの電話取材に、健康科学センターの医師や看護師から「食事の指導をしないといけないが、保健師による保健指導を受けても『授業や実験があるから食堂に行く暇がない』と実際の生活に生かせない学生が多い」との話が出たことだったと明かした。
昼休みの時間帯、食堂には学生が殺到し、食事をするのも一苦労だ。授業が詰まっていて、昼休み以外に食事の時間がとれない学生なら、食堂に赴くのが億劫になっても不思議ではない。そこで飯田さんら生協と健康科学センターが協力して、「忙しい中でも美味しく食べられ、栄養バランスもとれた、手軽にテイクアウトできる弁当を」とヘルシー弁当を考案し、キャンパス内のショップで販売を始めた。
「野菜4種類以上」「塩分3グラム以下」「500キロカロリー以下」がヘルシー弁当の基準。さらに、数字に表れない部分にも気遣いがある。「『よく噛む』ことができるよう、ゴボウや豆類、コメも十五穀米や麦ご飯を取り入れています」と飯田さんは話す。
また、食べる量は性別や体格でまちまちだ。スポーツをしている学生や、体の大きな男性で「少し足りない」と感じる場合を想定し、「プラスで食べるならおにぎりやヨーグルトなどの乳製品、野菜ジュースといった組み合わせをすすめています」と呼びかけもしている。
栄養バランスを「意識していない」学生は全国で約4割
「徐々にリピーターは増えていて、今までショップの弁当を利用していなかった学生や教職員の購入が多いようです」と飯田さん。バリエーションは当初「チキンヘルシー弁当」や「鰯醤油煮ヘルシー弁当」など5種類だったが、学生からメニューのリクエストが寄せられ、16年5月時点で「野菜炒め肉団子ヘルシー弁当」などが追加され、13種類まで増えた。一番人気は「グリルチキンヘルシー弁当」だ。
ヘルシー弁当の人気は広がってきたようだが、それでも学生の食生活は乱れがちだ。「健康的な食生活の知識を得ても『忙しい日々で調理する時間がない』『実際に何を食べていいかわからない』といった人が多いです」と京大健康科学センターの松崎慶一助教はJ-CASTヘルスケアの取材に答えた。内閣府が2009年に発表した「大学生の食に関する実態・意識調査報告書」によると、栄養バランスを「意識していない」学生は全国で約4割。また、朝食を食べない日が「1週間に4日以上ある」学生は約2割いる。
こうした現状の中、各大学で「100円朝食」の取り組みが目立っている。栄養のある朝食をとる習慣を定着させようと、通常250~500円ほどするメニューを、朝食の時間帯に限って100円で提供するものだ。慶應義塾大学、早稲田大学、明治大学をはじめ、多くの大学が取り入れている。
「たった100円じゃ、卵かけご飯と味噌汁くらいしか出ないんじゃ...」と思ってしまうところだが、そんなことはない。同志社女子大学の公式ウェブサイトには献立例が写真付きで載っており、米飯と味噌汁のほか、鯖の塩焼き、ホウレン草のおひたし、冷奴など、バリエーションの豊富さが確認できる。
立命館大学の発表では、「それまであまり朝食をとっていなかった」という学生も利用しており、そのうち6割以上が「100円朝食が始まったのを機に食堂を利用」しはじめ、習慣づいたという。「100円朝食を食べるために早起きするようになった」という学生もおり、生活習慣の改善にも一役買っている。