欧米では失明原因第1位という恐ろしい目の病気「加齢性黄斑変性」。日本ではまだなじみが薄いが、初めての本格的な調査で60~70歳代の20~30%がかかっていることがわかった。
2016年4月9日に開かれた日本眼科学会総会で、大津赤十字病院眼科部長の山城賢治医師が、滋賀県長浜市と京都大学が共同で行なっている健康調査研究(ながはま予防コホート)のデータをもとに報告した。
高齢化と食生活の欧米化により近年急増
日本眼科学会のウェブサイトによると、加齢性黄斑変性は老化現象の1つで、見ようとするところが真っ黒になったり、物がグネグネと歪んで見えたりする病気だ。目の網膜の中心にある黄斑に老廃物がたまって発症する。網膜は、カメラでいえばフィルムにあたり、黄斑は映像が焦点を結ぶ箇所にあたる。ただし、フィルムではどの部分でもよく写るが、網膜では黄斑だけがよく写り、ほかの部分はぼやけて見える。
このため、黄斑は非常に小さな部分なのに、それが機能しなくなると網膜の他の部分は正常でも視力が著しく低下する。治療せずに放置すると、多くの患者は視力0.1以下になり、さらに悪化すると失明に至るという。
日本では昭和30年頃までほとんどみられなかったが、高齢化と食生活の欧米化により近年急増しており、緑内障、糖尿病性網膜症、網膜色素変性に次いで失明原因の4位に上昇した。これまで、日本では高齢者の有病率を調べたデータはなく、日本眼科学会のウェブサイトにも「50歳以上の約1%にみられ、高齢になるほど多くみられる」と記されているだけだ。
「ながはま予防コホート」は、長浜市が募集した30~74歳までの男女約1万人の血液、尿、DNA・遺伝子配列情報、健康診断結果など多くの健康・医療情報を京都大学などの研究機関に提供し、がんや脳卒中、生活習慣病など様々な病気の予防に役立てようという試みだ。1万人規模の詳細な検査データを10年以上にわたって追跡する取り組みは全国初である。
山城賢治医師らのチームは、60~74歳の全参加者の眼科検診データを分析した。網膜の中にたまる老廃物のカルシウム量など、加齢性黄斑変性の初期にみられる4つの因子を測定した結果、60~69歳の23.4%、70~74歳の31.2%が早期加齢性黄斑変性を発症していることがわかった。ちなみに、かなり進んだ後期では、60~69歳の0.5%、70~74歳の1.0%がかかっていた。