世界の指導者や企業とタックスヘイブン(租税回避地)との関係が記された「パナマ文書」を入手・分析している「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)が2016年5月10日未明(日本時間)、文書に登場している約21万4000社の企業名や役員の個人名などをウェブサイトに公表した。そのうち日本関連の法人は400社が掲載されている。
タックスヘイブンの利用は必ずしも違法ではないが、大企業や富裕層が合法的に納税を回避することで国家の税収が減少し、「多くの市民や中小企業にしわ寄せがいく」という批判は根強い。一方で「個人として無駄な税金納めないのって普通じゃね?」(堀江貴文氏)などと、合理的で正当だとする見方もある。
南ドイツ新聞が入手し、ICIJメンバーが取材・分析
「パナマ文書」とは、中米パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」(MF社)から流出した内部資料として作成した1150万点の電子ファイルを指し、ファイルのサイズは約2.6テラバイトに及ぶ。
ICIJには約80か国から約400人の記者が参加。日本からは朝日新聞と共同通信から参加している。パナマ文書は南ドイツ新聞が入手し、ICIJがその内容をデータベース化。そのデータベースを活用してICIJメンバーが取材・分析を進めてきた。それに基づいて4月上旬から報道が始まり、アイスランドのグンロイグソン首相(当時)が辞任に追い込まれたほか、英国のキャメロン首相の亡父の名前も「パナマ文書」に名前があったとして国内世論の批判を浴びた。これに加えて、英国の金融行為監督機構(FCA)は金融機関20社に対して、パナマ文書関連の取引に関与していないか調査を要請している。
今回ウェブサイト上で公開されたのは、法人の名前や住所など。日本関連では伊藤忠商事、丸紅、ソフトバンク、楽天の三木谷浩史社長らの名前が挙がっている。契約書類そのものは公開されていない。
「パナマ文書で庶民の嫉妬を煽って得するのは財務官僚」
パナマ文書公開が近づくにつれ、日本国内でも誰がリストに載っているかに注目が集まった。そんな中で堀江氏は異論を唱えた。5月9日未明、堀江氏は
「パナマ文書のどこにニュースバリューがあるのかさっぱりわからん。普通に個人として無駄な税金納めないのって普通じゃね?」
とツイート。
「パナマ文書で庶民の嫉妬を煽って得するのは財務官僚と税金で食んでいる既得権益層なんだよ」
などと持論を展開した。
菅義偉官房長官は5月10日午前の記者会見で、
「一般論として申し上げれば、課税当局はあらゆる機会を通じて情報収集をはかるとともに、問題のある取引が認められれば税務調査を行うなど、適正、公正、公平な課税の実現に努めるべきだということは全く変わりない。今後も適切に対応していく」
と述べ、麻生太郎財務相も同日の会見で同様の答弁をした。