近畿大学、全学生の出欠・成績を親が「照会」可能に 「心配が解消」「過保護すぎる」と賛否両論

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   近畿大学(本部・大阪府東大阪市)は、学生の時間割や講義への出席率、成績など保護者がパソコンやスマートフォンなどで簡単に照会できる「保護者用ウェブサイト」を2016年4月から約3万2000人の学生全員に適用した。

   親の「子供はきちんと講義を受けているか」などの心配を解消したり、大学に気軽に相談したりできるシステムとして、保護者などには好評のようだが、ネット上には「過保護すぎる」「入学希望者が減るのでは?」などといった批判や心配も出ている。

  • 大学の成績、時間割、講義の出欠状況、科目ごとの出席率まで親に筒抜けになる(写真はイメージ)
    大学の成績、時間割、講義の出欠状況、科目ごとの出席率まで親に筒抜けになる(写真はイメージ)
  • 大学の成績、時間割、講義の出欠状況、科目ごとの出席率まで親に筒抜けになる(写真はイメージ)

「子供の学生生活のことをもっと知りたい」

   近畿大学にJ-CASTニュースが取材したところ、この「保護者用ウェブサイト」は15年9月に東大阪キャンパス(東大阪市)の学生2万2000人に適用し、この4月に残りの全国にある4つのキャンパスに拡大した。保護者は大学が発行したユーザーIDとパスワードを使って専用サイトにアクセスし、自分の子供の年間指導計画と講義スケジュール、出欠状況、成績などが確認できる。科目ごとの出席率までわかる。さらに、大学から提供される各種情報を受け取れるほか、大学に対して問い合わせや相談ができる「Q&A機能」もついている。システム自体はもともと学生用に作られていたもので、それを応用した。

   導入した背景について同大学広報は、保護者にリサーチしたところ「子供の学生生活のことをもっと知りたい」という声が多かったことと、いつの間にか大学に来なくなり、そのまま退学してしまう例もあるため、保護者の協力の元で学生にしっかりと大学生活を送ってもらいたいという狙いがあった、と話した。15年9月から始めた東大阪キャンパスでの状況は、16年2月末までに保護者ら約1500人がサイトを利用した。利用比率は6.6%と多くはないが、頻繁に利用する人が多くかなりの好評だった。

「子供を毎日監視するというよりも、学費の納め方など手続き的なものや、子供の学生生活に関する相談でサイトを利用している人が多い」

としている。学生の反応としては「これは困る」「やめてほしい」といった声は聞かれなかった、という。

   これについてネット上では、「過保護すぎる」などといった意見が集まり、

「大学デビューの奴らは、最も知られたくない情報の一つだなw」
「別にいいけどこれやったら受験生から避けられないか?」

などといったものが出ている。

就職活動にデメリット?

   一方で、

「過保護ともいえるけど時代の流れとしては至極当然だわ」
「サボり始めたのがリアルタイムで察知できるのはいいと思う。手遅れになる前に」

などの肯定意見もある。

   教育評論家の森口朗さんは近畿大学のシステムについて、「選挙権が与えられる18歳は成人であり本来なら親に監視されるべきではないし、しっかりと学び卒業、就職するのが理想だ」としながらも「90数パーセント以上は親からお金を出してもらい通っているわけだから、親というスポンサーに対し大学生活に関する自分の情報を伝える義務があるため、こういうシステムを利用するのも一つの方法だろう」と分析した。

   ただし、「デメリットは思わぬところに存在する」という。それは学生が就職活動をする際のイメージで、企業側が私立大学の学生に期待しているのは「たくましさ」。「保護者用ウェブサイト」が近畿大学のイメージになってしまうと、親の管理下の元で大学生活を送ったという「ひよわ」な学生に見られる可能性が高くなり、企業に敬遠されかねないというのだ。近畿大学といえば、もともと雑草的なイメージで、私立大一般入試の志願者数が日本一となり、偏差値や大学のレベルも上がっているだけに、それにブレーキがかかるきっかけになりかねないという。

「『たくましい』入学希望者は別の大学を選択しないとも限りません。全学生を対象にするのではなく、このシステムを使うのは希望者のみという薄い運用にしたほうがいいのではないかと思います」

そう森口さんは話している。

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