日本人の死亡原因の1位はがん、2位が心臓病、3位が肺炎、4位は脳卒中。このうち2位と4位は高血圧が引き金になる。50代以上の半分は高血圧だが、「サイレントキラー」と呼ばれ自覚症状がないため、つい軽く考えがち。
悩めるアナタに朗報が。なんと、手を握り締めるだけで血圧が低くなるというウソのような療法がある。
握って緩めると出る一酸化窒素が血管をやわらかくする
この握力を使う「ハンドグリップ法」を考案したのは、カナダ・マクマスター大学の高血圧治療の専門家、フィリップ・ミラー博士だ。高血圧の治療には、医師による薬物療法や生活改善指導などがあるが、患者が1人で行なって効果が上がる療法として、米国の大きな学会で認めた数少ない方法の1つだ。
世界中の高血圧の代替療法の効果を調査していた米国心臓学会の研究チームは2013年4月、過去に発表された約1000件の研究を分析した結果、たった2つの療法に医学的に効果が認められると発表した。それが、ウオーキングなどの「有酸素運動」と「ハンドグリップ法」である。
調査対象の中には、ヨガ、太極拳、気功、ハリ療法、瞑想なども含まれていた。しかし、ヨガや気功にはリラックス効果はあるが、実際に血管をやわらかくして血圧を下げる効果はあまり期待できない。一方、ウオーキングなどの有酸素運動やハンドグリップ法を4週間続けると、収縮期血圧(上限)と拡張期血圧(下限)が平均10%下がることが判明したという。
これほど効果のあるハンドグリップ法とは、どんな方法なのか。研究チームの論文によると次のとおりだ。
(1)握力を測ることができる「デジタル握力計」を使う。
(2)自分の最大握力の「30%の力」で、「2分握って1分休む」を左右2回ずつ行なう――。これだけである。1日行なう所要時間は約10分だけ。
これがどうして効果があがるのか。その理由はこうだ。
(1)握力計を握ると筋肉が収縮するため血流が止まる。次に力を緩めると、どっと血液が流れる。この時、血管の内皮細胞から一酸化窒素が出てくる。
(2)一酸化窒素には、血管の壁をやわらかくして血管を広げる作用があるため、血圧が下がる。
(3)なぜ、30%の力で握るとよいのかというと、強い力で握り過ぎると、血管が過剰に圧迫され、血圧が乱高下し、めまいを起こすおそれがある。30%程度が筋肉にちょうどよい負荷となる。