ついに逮捕者が出たプロ野球の「野球賭博」事件。新たな選手名が出てくるのか、球界は緊張感に包まれている。
笠原将生元投手が野球賭博問題で警視庁に逮捕されたのは、2016年4月29日のことである。容疑は賭博の仲介で、飲食店経営者とされていた男性も同時に逮捕となった。
「ついに来るべき時がきた」
「ついに来るべき時がきた」
ある巨人関係者は、そう言ってため息をついた。笠原は巨人のエース候補と期待されたこともあるだけに、複雑な表情だった。
「逮捕で新たな展開になるのだろうか...」
こんな言葉が続いた。これまでの球界による調査とはわけが違う。新しい事実が出てくるかも知れないというのである。
気になることが起きていた。
日本野球機構(NPB)が自主申告を各球団選手らに求めたが、だれ一人申し出る者はいなかった。NPBがそれを発表したのは笠原逮捕の3日前、26日のことだった。
その後、笠原のインタビューがテレビ各局から放映された。彼の言い分は「謝罪」に終始した。
この流れは何なのだろう。
「笠原は、逮捕されることを覚悟していたのではないか。その前に自分の言葉で反省の態度を示しておきたかったのだろう」
取材記者はそう解説した。
何が出てくるか分からない恐怖
笠原と同僚だった福田聡志、松本竜也、高木京介の3元投手に対しても、警視庁は事情を聴く方針と報道された。
野球賭博の胴元に行き着くのは難しいといわれる。警察にすれば、逮捕者や容疑者は事件の重要な情報源である。野球選手は本来は素直だから、事実をすべてしゃべることは想像に難くない。
球界が息を潜めているのは当然だろう。
もっとも神経をとがらせているのが巨人というのも当たり前だ。自分のチームに在籍し、1軍で投げたことがある投手が並んでいるのである。
「確かに、巨人の選手は言葉が重い」
巨人OBはそう感じている。高橋由伸新監督の巨人は開幕から好調で、5月の連休に入っても首位を争う。いい試合をしてファンの心配を吹き飛ばしたいという思いが伝わってくる。
球界関係者の中には、野球賭博だけではなく、闇カジノなどの違法行為にも気をもむ。バドミントンに続き、スノーボードでも大麻問題が明らかになったばかり。何が出てくるのか分からないという恐怖でもあるのだ。最近にない緊張感の中に球界は放り込まれている。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)