訪日外国人やビジネス客に不透明感
それでは2017年3月期はどうか。3社のうち営業利益が前期比7.7%減の4500億円と最も大きい落ち込みを見込むJR東日本は北陸新幹線の開業効果の反動が大きい。新たに北海道新幹線は今年3月に開業したものの、東京から函館までの運行時間が「4時間の壁」を切れず、飛行機から乗客を思うように奪えないため、北海道新幹線が東北新幹線に乗客増に与える効果は限定的と見る。
JR東海も2017年3月期の営業利益は0.3%減の5770億円と小幅ながら減益を見込む。実際に営業減益となれば、7年ぶり。東海道新幹線の改修などの修繕費用がかさむことなどが響く。過去最高を更新してきた売上高も0.1%減の1兆7360億円とわずかながら減収を予想する。JR東海の場合、主力の東海道新幹線の動向とは別に子会社の日本車輌製造の経営悪化も響く。日本車輌はその名の通り、新幹線などの車両を生産する会社だが、米国事業で納入遅れなどのトラブルが拡大し、2016年3月期に純損益が161億円の赤字。2017年3月期も30億円の赤字を見込んでおり、業績でJR東海の足を引っ張るだけでなく、悲願の米国への新幹線輸出にも暗雲を漂わせている。
JR西日本の2017年3月期の営業利益予想は3.3%減の1755億円。北陸新幹線開業効果が一巡するほか、円高などで訪日外国人の伸び鈍化を見込んでいることも影響する。JR西によると、2016年3月期の北陸新幹線の乗客数は、前年度の在来線利用と比べ2.7倍になった。開業1年余りで利用者は1000万人を突破し、好調だ。新規開業区間の距離にして4分の3はJR西のエリアだけに、業績に与える開業効果は大きい。しかし2年目にさらに飛躍するかどうかは微妙とみられている。
日銀短観の大企業製造業の景況感が、2年9カ月ぶりの低水準になるなど、日本経済に停滞感が出ている。こうしたなかでは、新幹線の主要顧客であるビジネスマンの移動が前年度より活発になるとは考えにくい。新幹線需要は「踊り場」か「ピーク」か、2017年3月期はそれを占う年になるかもしれない。