避難所で心配される卑劣な「性被害」 熊本市が啓発チラシを配らざるを得ない被災地事情

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   「避難所・避難先では、困っている女性を狙った、性被害・性暴力などが増加します」――。熊本市の男女共同参画センター「はあもにい」が、2016年4月に発生した熊本地震で、いまなお避難所生活を送る女性に向け、こんな内容の啓発チラシを作成し注意喚起を行っている。

   チラシの中では、「男の人が毛布の中に入ってくる」「授乳しているのを男性にじっと見られる」など、過去の震災時に起きた性被害の事例を紹介している。実際、こうした災害時の性被害を避けるため、避難所では「ピンクや赤色など一目で女性と分かるような格好は避けるべき」だと指摘する専門家さえいる。

  • 熊本市男女共同参画センターが作成した避難所での「性被害」を啓発するチラシ
    熊本市男女共同参画センターが作成した避難所での「性被害」を啓発するチラシ
  • 熊本市男女共同参画センターが作成した避難所での「性被害」を啓発するチラシ

見て見ぬふりをして助けてくれない

避難所で、夜になると男の人が毛布の中に入ってくる(20代女性)
更衣室をダンボールで作ったところ上からのぞかれた(13~16歳女子)
避難所で成人男性からキスしてと言われた。トイレまでついてくる(6~12歳女子)

   熊本市男女共同参画センターが熊本地震を受けて作成したチラシの中には、1995年の阪神淡路大震災と2011年の東日本大震災で報告された「避難所での性被害の事例」が紹介されている。

   さらに、取り上げられた例の中には、周りの女性が性被害に気づいているにも関わらず、「(男性が)若いからしかたないね」として見て見ぬふりをして助けてくれなかった、というケースもあった。

   チラシでは、こうした目を引く実例を取り上げつつ、避難所で生活する女性に対して「単独行動はしないようにしましょう」などと注意喚起。周囲の人間に対しても、「見ないふり・知らないふりをせず助け合いましょう」と協力を求めている。また、チラシの下部には熊本県警や区役所の福祉課など、10か所の相談機関の電話番号も掲載されている。

   男女共同参画センターの総務管理課は16年5月2日のJ-CASTニュースの取材に、今回のチラシを作成した理由について、

「女性への注意喚起はもちろんですが、避難所の運営者側に対しても、こうした性被害についての実態を知ってもらい、注意や配慮を行って頂くように訴える意味合いが強いです」

と話す。また、避難所での性被害に目を向けたのは、震災を受けて実施した全国の女性会館等へのヒアリングで、震災後に発生する性被害の実態について説明されたことがきっかけだという。

避難所は「女性が性被害を訴えにくい雰囲気」

   男女共同参画センターは、「本震」が起きた4月16日の翌日からチラシ作りを開始し、22日までには配布を行っていた。行政と連携して避難所での掲示を進めているほか、センターの職員も15か所以上の避難所を直接訪問し、チラシの配布や声かけ運動を実施しているという。

   避難所の性被害について、防災アドバイザーの岡部梨恵子さんは16年4月16日に更新したブログで、「被災してすぐにやってほしいのは、 女を捨てること」だと指摘。性犯罪の被害を受ける確率を減らすため、ピンクや赤色など一目で女性と分かるような格好は避けるべきだと具体的なアドバイスを送っている。

   また、NPO法人「女性と子ども支援センター ウィメンズネット・こうべ」の代表者は取材に対し、「避難所では、女性が性被害を訴えにくい雰囲気ができるケースがある」と話す。

   続けて、阪神淡路と東日本の2つの震災時に避難所を訪れた経験があると述べ、

「阪神淡路の際には、避難所でのセクハラを報告した女性が『加害者も被災者なんだから、大目に見てやりなさい』と周りに言われたという話を耳にしました。また、東日本の時には、授乳室や更衣室の用意がない避難所があったのですが、食の問題や被災し建物の応急処置などが優先される状況の中で、女性が声を上げることができなかったそうです」

と当時の状況を語る。その上で、こうした災害時の性被害対策については、「避難所や災害支援団体の運営に、女性が携わること」「災害発生前の段階で、女性の視点を加えた防災計画を立てること」の2点が重要だと改めて強調している。

   16年5月2日現在、熊本県内の避難所で生活している人は、なお2万557人いるとみられている。

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