「対決回避」が選挙に有利に働くのかどうか
与党側にとって今国会は、選挙に向けたシナリオの一環だ。同日選になるか否かは別にしても、16年度予算を3月中に成立させ、その後は4月中にTPP承認のめどをつけ、5月末の主要7か国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)を議長国として成功させ、「成長戦略」などの政策メニューもそろえて選挙になだれ込む――というものだった。
結局、TPPのとん挫を受け、与党は「対決回避」に動いた。「終盤国会は安全運転で野党に攻め口を与えないのが選挙に有利」(与党筋)という判断だ。野党も「九州の地震への対応で対決ムードを盛り上げにくい」(民進党議員)と警戒する。
だが、TPP承認の先送りが与党に有利かは、疑問の声もある。もともと安倍首相は、TPPを「日本経済が中長期的に力強く成長していく基礎」と位置付け、伊勢志摩サミットでオバマ米大統領と日米の経済連携強化を打ち出し、参院選での「目玉商品」にする予定だった。この目論見が崩れた。
もちろん、選挙では「一億総活躍」など他のメニューをアピールし、待機児童など野党に攻められそうなテーマでも対策を盛り込む。ただ、保育所などは長らく解決できなかった問題だけに、世論の風当たりは与党に厳しい。肝心のアベノミクスも円高・株安で大きく揺らいでおり、TPP先送りは「ボディーブローとして与党にダメージになる可能性はある」(全国紙政治部デスク)との声も出ている。