「TPP見送り」は安倍政権のボディーブロー? 参院選を控えて与野党の損得勘定

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   環太平洋経済連携協定(TPP)の承認案と関連法案の今国会(会期末2016年6月1日)での成立が見送りになった。TPP交渉の情報開示などで野党側が揺さぶりをかける中で、4月中旬に熊本地震が発生したことが「決定打」になった。地震対応を優先すべきだとの声が強まったということだ。

   ただし、7月の参院選への悪影響を考えて強引に審議を進めることを懸念する与党が、地震対応優先という格好の口実に飛びついたともいえる。だが、参院選を控えて、その損得勘定はどうなのか。

  • 参院選の「目玉商品」だったTPP承認は先送りされた(写真は2014年6月撮影)
    参院選の「目玉商品」だったTPP承認は先送りされた(写真は2014年6月撮影)
  • 参院選の「目玉商品」だったTPP承認は先送りされた(写真は2014年6月撮影)

最初からつまずいた与党側

   元々、参院選を控えて今国会の会期延長はないというのが政治日程の大前提だったことから、TPP承認は時間的にも難しいとの声は与党内に根強かったが、4月6日の衆院TPP特別委員会での審議入りからもたついた。

   まず、交渉途中に政府が官邸向けに交渉の進捗状況などを説明するために作成した「論点整理ペーパー」。野党が交渉過程の記録の提出を要求し、与党が応じて政府が提出したが、全45ページにわたり、表題以外はすべて黒塗りというもので、野党には「情報開示が不十分」と攻め立てる格好の材料になった。

   もちろん、外交交渉の細かい経過は出すものではないという政府の説明は、国際的には常識。特に、TPPでは「秘密保持契約」を結んでおり、その意味でも、通常の信義則という以上に、明かせないというのが政府側の理屈だ。

   とはいえ、TPPという通商交渉では、何を譲り、何を勝ち取ったのかという損得勘定が重要であり、国会審議の中で、政府が、ニュアンスも含め、交渉の経過をそれなりに示したり、匂わせたりするもの。要は程度問題なのだ。こうしたことは与野党とも承知の上でのさや当てだったが、その中で、TPP特別委の西川公也委員長(自民)がTPP交渉の内幕を描いた著書を出版することが明らかになって、野党の攻勢が一気に加速。ゲラが出回り、「政府の情報漏洩」と批判されて審議は空転し、日程はいよいよ窮屈になっていた(西川氏は結局、出版を撤回)。

   この話は、「口利き」問題で辞任に追い込まれたTPP担当の甘利明・前経済再生相が交渉をまとめたことも絡み、野党が甘利氏の国会招致を求めるなど、TPP審議に影を落としていた。

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