【意外とバズったJ-CAST記事(3)】認知症を患う高齢の母と心中を図った男が、数年後に自殺していた――。そんな重い話がネットユーザーの注目を集めた理由は何だったのだろうか。
2016年1月7日に公開した記事
「『そうか、あかんか』認知症母殺人心中未遂 息子『後追い自殺』報道にネット『心が痛い』と衝撃」
は、4月末までに1400回超もシェアされ、ツイッターでもたびたび言及された。
10年の前のある事件
話の起点は、10年前に京都市伏見区で起こったある事件。2006年2月、認知症を患う母親(当時86歳)を1人で介護していた男性(当時54歳)が、失業保険の給付停止で生活に行き詰まり、母親の首を絞めて殺害。直後に自殺を図るも、未遂に終わった。
その男性の悲劇的な結末が伝えられたのは、事件から10年を迎えようとしていた16年1月5日。同日付け毎日新聞が、滋賀県大津市の琵琶湖周辺で2年前に投身自殺したと報じたことを機に、あらためて注目が集まった。
同事件をめぐっては、ネット上で有名なコピペ(掲示板サイトなどに張り付ける際、定型となる話)が存在していた。このコピペは06年4月、男性の初公判で検察側が語ったエピソードを下地にしている。
それは「心中直前」に母と男性が交わしたやり取り。同年2月1日早朝、桂川河川敷の遊歩道で「もう生きられへん。ここで終わりやで」と母に告げた。これに母が「そうか、あかんか。一緒やで」と返すと、男は「すまんな」と謝罪。自分の額を母の額にくっつけた。その後、男は「わしの子や。わしがやったる」という母の言葉を合図に母を殺害したという。
「どうしてこんなことが起こってしまうのか」
当時、マスコミは「地裁が泣いた」などと裁判官の動揺ぶりを伝えた。一方、ネット上でもこのやり取りが「コピペ」され、事件以後も「マジで泣けるコピペ」「泣きたい時に見るコピペ」としてSNSや掲示板サイト、まとめサイトなどに張られ続けた。
そんな背景を持つ事件だっただけに、今回のJ-CAST記事には
「どうしてこんなことが起こってしまうのか」
「何度読んでも泣けてしまう」
「こんな結末誰も望まん......」
と、あらためて悲しみの声が続々寄せられた。それだけでなく、男と母親を救えなかった行政への批判も見受けられた。
認知症がきっかけの介護殺人は年々増えている。16年4月5日にも、兵庫県加東市で認知症の女性(79)が夫(82)に殺害される事件が起きた。逮捕前、夫は自宅に「精も根も尽きた」と書かれたメモを残していたとも報じられており、10年前と変わらず「認知症介護」の現状は依然厳しいままだ。