円高「阻止」の手段を封じられた日本
最初の失敗が4月6日、安倍晋三首相が米ウォールストリート・ジャーナル紙上で「恣意的な為替市場への介入は慎まなければならない」などと述べたこと。主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)議長として、一般論としての発言だったが、市場は「円が急騰しても介入しない」と受け止め、さらなる円買いを誘発してしまった。
G20財務相会議の際には、ルー米財務長官から「円高とはいえ相場は秩序的だ」とくぎを刺され、円安誘導をとれないよう、手を縛られてしまった。麻生太郎財務相は14日の日米財務相会談で「最近の円相場の偏った動きを懸念している」とルー長官に語り、円売り介入への暗黙の了解を取り付けたつもりだったとされるが、失敗に終わった。
麻生財務相がG20後、「金融政策は制約されない」と強調したこともあり、介入がだめなら日銀が追加緩和に動く――市場でそんな見方が広がったわけだが、そこに「身内」から変化球が飛んできた。三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長は4月14日の講演で「マイナス金利は銀行業界にとって短期的には明らかにネガティブ。(企業や家計の)懸念を増大させている」と、公然と日銀批判を展開した。
銀行界に反旗を翻された格好の黒田総裁は、衆院財務金融委の質疑などで、マイナス金利が限界にきているわけでないと繰り返し、28日の決定会合後の会見でも「必要ならマイナス金利はいくらでも深掘りできる」と言明している。
実は、この間のメガバンクを意識したマイナス金利批判への反論が「市場の追加緩和観測を強めた」(市場関係者)のは皮肉だが、銀行界からの異論が、追加緩和をしにくくした面は否めないだろう。