いつも家の前の道路にゴロリと転がる不愉快なモノ。犬のふんを片づけない飼い主にフンガイする人は多い。スペインの首都マドリードの市当局は2016年4月25日、犬のふんの後始末をしない飼い主に対し、路上清掃活動を科す「強硬手段」の導入を検討すると発表した。
犬のふん害は、世界共通の悩みだが、モラルに欠ける飼い主に対し、あの手この手のユニークな方法で対応する国が増えている。
罰として「路上清掃活動」を命じるマドリード
4月26日付AFPの報道によると、マドリード市当局は、近く試験的な取り組みとして、自治体警察が最も犬のふんが多い2つの地域で取り締まりを開始し、ふんの後始末をしなかった飼い主には最高1500ユーロ(約18万9000円)の罰金か、数日間の路上清掃活動を命じるという。
市の担当者は、「これまで何度も啓発活動を繰り返し、犬のふんを入れる無料の袋を数百万枚も配ったのに、今も路上や公園に排泄物がたくさん落ちている」というコメントを発表した。堪忍袋の緒が切れた形だ。
マドリードの清掃活動のような「労働刑罰」の例は珍しいが、複数の海外メディアによると、最近、各国に広まっているのが、放置された犬のふんのDNA鑑定を行い、不心得者の飼い主を特定するという方法だ。米テネシー州に拠点を置く「バイオ・ペット・ベットラボ」社が、「Poo Prinnts」(pooはウンチの意味)という犬のDNA鑑定検査キットを開発したのがきっかけだ。これは、犬の唾液などを採取、DNAと飼い主の情報を同社に登録しておくと、捨てられたウンチから犬と飼い主がわかる仕組みだ。
米マサチューセッツ州プレインツリーの一戸建て団地では、2013年にこのDNA鑑定制度を導入した。団地内の広大な敷地には、犬のふんがゴロゴロ落ちていた。巡回中の清掃員が、犬が排泄した直後に立ち去る飼い主に注意すると、「うちの犬がやったという証拠を見せろ」と抗議を受けるケースまであった。そこで、団地の自治組織の顧問弁護士が全398世帯の承諾を得て、飼っている犬のDNA登録を義務付けることにした。
飼い主は60ドル(約6700円)の検査キットを購入し、愛犬のDNAをバイオ・ペット・ベットラボ社に登録しておく。放置された犬のふんが見つかると、同社にサンプルを送り、DNA鑑定を行って飼い主を突きとめる。飼い主は検査料50ドル(約5600円)と罰金100ドル(約1万1200円)を自治組織に支払う。おかげで犬のふんはほとんどなくなった。「犬のオシッコの方も何とかならないかしら?」という苦情があるが、こちらは少し難しいという。
このDNA検査方式は全米各地に広がり、1000か所以上の地域で行なわれているそうだ。イスラエル、カナダ、イタリアなどにも広がり、ナポリ市が2015年に導入した。同市では犬はすべて保健所で登録されるが、その際、血液を採取してDNAも登録する。犬のふんを放置した飼い主には500ユーロ(約6万3000円)の罰金を科す。かなり高い額だ。