「テレビも無(ね)エ」などのユニークな歌詞で知られる、演歌歌手・吉幾三さんのヒット曲「俺ら東京さ行ぐだ」が、32年ぶりにアナログ盤で再販されることになった。
今回の再販をきっかけに、30年以上前に書かれた歌詞の内容が「逆に新しい」「今風」だとの声も出ている。
再販を企画したタワレコ「世代や時間を超えて愛される曲」
1984年に発表された「俺ら東京さ行ぐだ」は、吉さん自らが作詞・作曲をつとめた楽曲だ。
吉さんは青森県北津軽郡に生まれ、歌手を目指して15歳の若さで上京。馴れぬ都会で職を転々とし、爪に火を灯しながらも夢を追う・・・。そんな自身の経験を織り交ぜつつ、東京に憧れる田舎者の悲哀を自虐的に歌った同曲は、当時のオリコンチャートで21位を記録するヒット曲となった。
そんな「俺ら~」が、発表から32年経ったいまこのタイミングで、なぜか「アナログ盤」で再販されることが決まった。発売日は2016年5月25日で、CDショップチェーン「タワーレコード」限定の取り扱いとなる。
レコードのジャケットも、発売当時のものを忠実に再現。カップリング曲には、吉さんのデビュー曲「俺はぜったい!プレスリー」を、1980年代に活躍したバンド「ピチカート・ファイヴ」の小西康陽さんがリミックスしたものが収録される。
まさかの再販に、ツイッターなどでは「マジかよ」「今西暦何年だよ」といった戸惑いが広がる一方で、「正直オラこれ欲しい」「絶対欲しい!!」と歓迎する声も見られた。
今回の再販を企画した「タワーレコード」商品本部の担当者は、4月28日のJ-CASTニュースの取材に対し、
「吉さんの『俺ら~』は、発表から30年以上が経った今でもCMソングに起用されるなど、『賞味期間』の長い曲として今も親しまれています。また、若い人の間では、同曲を個人でアレンジして、動画サイトに投稿する動きも盛んです。こうした点から、世代や時間を超えて愛される同曲の再販を企画しました」
と説明する。また、アナログ盤で発売したのは、「いま若い人の間でレコードが再ブームになっている」ためだという。
レーザー・ディスクって何?
テレビも、ラジオも、電話も、ピアノも、新聞も、雑誌も「無エ」――そんな「何もない」田舎に住む若者の思いを、「こんな村いやだ 東京さ行ぐだ」とストレートに訴えた吉さんの歌詞。だが、30年以上前に考えられたこの歌詞をめぐって、
「(現代の)東京がこの歌詞の状態になっている」「逆に新しい」
との指摘が、今回の再販をきっかけとしてネット上に出ている。
歌詞に登場する「レーザー・ディスク」や「のぞき(部屋)」といったモノも、30年経った今ではすっかりと言ってよい程、都会から消えてしまった。「ディスコ」という呼び方も今はしない。また、PCやスマートフォンの普及もあり、現代の若者の中にはテレビやラジオを「持っていない」人も増えているといわれる。
また、2015年の「ユーキャン新語・流行語大賞」には、モノをほとんど持たずに最小限の生活用品で暮らす人を表現した「ミニマリスト」という言葉が候補にノミネートされていたことも記憶に新しい。
実際、ツイッターやネット掲示板などを見ると、
「時代が来たな。 そりゃ若者の中には『テレビもねぇ、ラジオもねぇ』『レーザー・ディスクは何者だ』って現代人、いるもんなぁ」
「俺より若い世代のやつはレーザー・ディスクなんぞ知らないよな。きっと彼らの家にはラジオもないのだろう」
「ミニマリストの元祖は吉幾三でいいってこと?」
といった投稿が複数見つかる。また、「レトロ調が再流行してるのもあって『俺ら東京さ行ぐだ』のジャケットむしろ新しくない?」との声も出ていた。