「地下水が濁っていても、人体に害を及ぼす可能性は低い」
豊富な地下水資源を持つ熊本県は、水道水源の8割を地下水に依存している。そのため、今回の地震が地下水脈に与えた影響は、「生活用水」や「飲料水」にも及んでいる。
熊本市の生活衛生課は取材に対し、「14日の『前震』後に地下水の濁りが報告された」として、地下水の異変が「水道事業の復旧を遅らせる一因となった」と説明する。
また、井戸水などの水質検査を実施している熊本市の再春館「安心・安全」研究所によると、「地震の発生以降、飲用水を検査して欲しいとの依頼は明らかに増えた」。検査した水の多くは飲用基準を満たしていたというが、中には濁りが確認されるなど、基準を満たさない水も見つかったという。
地震の影響で地下水の濁りが発生した件について、産業技術総合研究所の丸井敦尚(あつなお)地下水研究グループ長は取材に対し、
「熊本地方は火山地域のため、地中にヒ素などの有毒物質がほとんど含まれていません。そのため、地震によって地下水に砂や泥が交じったとしても、人体に害を及ぼす可能性は低いでしょう」
と説明する。その上で、地下水そのものの「見た目の変化」よりも、汲み上げた地下水を貯めた浄水場が地震の影響で破損し、有毒物質が混入してしまった場合の方が「安全上のリスクが高い」と指摘。「地下水について、あまりうがった見方をしないで欲しい」とも訴えた。
丸井氏は続けて、
「地震の影響で地下水の供給・循環システムに変化が生まれ、湧き水が枯渇したり、温泉の湯量に影響が出たりするのは当り前の現象です。人間の側からすれば大きな損失になりますが、地球のシステム上は自然な動きです」
とも話した。