ゴーン社長は、まだ決定していない
日産にとっても、打撃は極めて大きい。全国の日産のディーラーからはデイズ、デイズルークスが一斉に撤去されたが、顧客から「不正を働いたデイズを買い取ってくれ」といったクレームが早くも届いているという。
日産と三菱自の提携解消――。誰もが、当然連想するところだが、事はそれほど単純ではない。日産の2015年のデイズ、デイズルークスの販売台数は約15万台で、日産の国内販売の4分の1を占める主力車種。販売店にとって、軽は品ぞろえとして不可欠な存在で、どう商品を確保するか、極めて深刻な問題だ。
生産面の関係も、簡単に切れるものではない。日産は次期軽自動車の開発を主導するものの、軽のエンジンやトランスミッションを持たず、生産工場もない。日産が新たに工場を設け、自前で軽を生産する決断をするなら別だが、「現実に軽は利幅が少なく、即座に設備投資を決断するのは難しい。タイなど海外の生産工場でも三菱自と提携しており、簡単に関係を打ち切るのは難しい」(日産関係者)という。他社との提携を検討するにしても、簡単に右から左へ乗り換えられるものでもなく、何年もかける大仕事になる。
カルロス・ゴーン日産社長が4月26日に自動車ショーのため訪問中の北京での会見で、「すべての事実がテーブルの上に出そろってから決定を下す」と述べ、三菱自の調査結果を待つ姿勢を強調したのも、状況判断を慎重にしたいとの考えの表れだろう。
三菱自は第三者調査委員会を設け、3カ月ほどかけて不正の全容解明を進めるという。三菱自自体の生き残りがいばらの道なのはもちろん、日産の対応もまた、厳しいものになる。