百地氏「東日本大震災では憲法上の根拠なく運用上問題になった」
その上で、
「この時に、もし緊急事態条項があったと仮定するならば、最初から国が前面に出て、必要な自衛隊、警察、消防隊を含めて、事態に対処することができたであろうと思われる。物資も、物資が届いても現場で色々なところに滞っていて、本当に必要なところに届けられないという状況があって、かなり混乱した。それが今、じょじょに解消されつつある。熊本県は本当に一生懸命やったが、やっぱり全体の状況が把握できなかったのが事実。そういうことも含めて、緊急事態条項というものがあれば、最初から国がそこにパッと行って対処できるということが、おそらく大きな違いなんだろうと思う」
と話したが、県より国の方が迅速に対応できる根拠などは示されなかった。別の記者は
「緊急事態条項の何によってどんな混乱が防げたのか」
と質問し、百地氏が回答。百地氏によると、緊急事態条項をめぐる問題には(1)憲法で定めなければ動けない問題(2)法律は現在あるが、憲法上の根拠が明確でないために、色々と運用上支障があった問題(3)法律で対応出来るケース、の3つがあるとした上で、
「今回は法制度の問題として言えば、(熊本地震は)非常災害で(東日本大震災のような)緊急災害ではない。いずれも法律の範囲内で対応する事柄。ただ、対応の仕方に色々問題があったか、そういった問題は別として、(熊本地震は)一応法律の範囲内で行動できるものと位置づけられた」
などとして、熊本地震は(3)にあたると指摘。東日本大震災は(2)にあたると説明し、緊急事態条項を新設することで憲法上の根拠を整備しておくべきだとの考えを示した。
「それに対して東日本(大震災)の時は、例えば災害対策基本法に基づいて、がれきを処理することは、一応条文上は可能だった。可能だったが、憲法上の財産権の不可侵との関係で、なかなか自治体としても判断がつきかねる。政府自体も、官房長官あたりも、財産権の問題として緊急立法が必要だと言っている。現在、緊急事態法制はあるが、やはり憲法上の根拠が明確でないために、なかなか動かない場合がある」