ジャーナリストの櫻井よしこ氏ら早期の憲法改正を求めるグループが2016年4月26日、都内で記者会見し、「緊急事態条項」の制定に向けた憲法論議を改めて求めた。特に櫻井氏は、仮に緊急事態条項があれば、熊本地震は「最初から国が前面に出て」「事態に対処することができたであろうと思われる」と主張。現行憲法が災害対応の妨げになっているとの持論を改めて主張した。
だが、会見に同席していた百地章・日大教授は、熊本地震は現行の法律内で対応できたとの立場を表明。登壇者間の温度差も浮き彫りになった。
自民党が野党時代にまとめた憲法草案で明記
「緊急事態条項」は、自民党が野党時代の12年にまとめた憲法草案で新設を明記。首相が大災害や武力攻撃時に閣議で緊急事態を宣言すれば、法律と同じ効果を持つ政令を定められることをうたっている。政府の対応が迅速化する可能性がある一方で、行政がフリーハンド化することで基本的人権が制限されるという懸念も根強い。
櫻井氏は冒頭、
「熊本の地震を例に見るまでもなく、様々な自然災害に対応するために、どうしても憲法を改正して、そこに緊急事態条項という、これが正式な名称になるかは分からないが、起こりうる緊急事態に対処するための条項を新たに設ける必要があるだろうということで、私たちは意見を一致させている」
などとして緊急事態条項の制定を訴えた。当然、記者からは
「具体的に緊急事態条項があった場合、熊本地震で、どんな新たな対応が可能だったのか」
などと具体的な効果を問う声があがった。
櫻井氏は、
「注意をして私も話すが、(記者の側も)注意をして書いていただきたい。決して地方自治体を責めるということではない、という大前提に立っていただきたい」
と前置きしながら、緊急事態条項があれば災害発生直後から政府が関与して迅速な対応が可能だったはずだと主張した。
櫻井氏によると、4月14日夜の地震の段階では、「県で何とか対応できると思ったと思う」が、16日未明の「本震」で、
「すさまじい破壊が起きてしまって、『これはとてもできない』ということで、そこから家屋の倒壊も増えたし、避難する方も桁違いに増えた」
として、県だけでは対応が困難になった可能性を指摘した。